共犯化

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「いいか、てめぇーら、よーっくきけ。ソファーはヨ、かっこいいだけじゃだめなんでぇ。」
 
 
完全に田中邦衛が乗り移ったような口調で、その男は話しはじめた。
 
 
「いいか、一番大事なことは何でぇ?それはヨ、座りやすさだ。そんなこともわからねんじゃソファはつくれねぇ。」
 
「次に大切なのは何でぇ?それは長持ちするかどうかだ。カッコはよ、最後さ。いいか?」
 
 
ここはイタリア老舗家具メーカーMolteni&C社の工場。そして彼はソファの製作責任のトップであるA氏。
「ものづくりの戦場」を生き抜く男のオーラをまき散らしている。
 
1セット、数百万の特注ソファに座りながらこう続けた。
 
「お客さまは、神様じゃねぇ。じゃあ何だ?それはヨ、ものづくりのパートナーさ。ここ大切だ。覚えとけ。
そのためには俺たちの技術の高さを時間をかけてよーっく理解してもらう必要がある。じゃないと高い金はとれねぇ。そこサボっちゃいけねぇ」
 
 
 
何と、お客様は神様ではなく、「共犯」だという驚きの理念が披瀝された。
 
何のための共犯化なのか? 
 
それは企業の威信をかけた技術とデザインを堅持するための「共犯化」である。
 
 
「お客様は神様」的な経営者には馴染まない発想かも知れないが、高い価値を高く売るためにはよく考えるまでもなく正しい。
 
 
いきなり核心にせまるA氏のこの発言から、今回のミラノ取材の視点は整理された。
 
実際に田中邦衛が入っていたかは別にして、「共犯化」はものづくりにとって重要なキーワードであることは確かだ。 
 
 
ちなみに、「カッコウは最後」といっていたA氏であるが、超有名デザイナーとのデザイン開発の実績は、この企業が単なる伝統重視型のカタブツ集団でないことを十分に物語っている。
 
 
 
 
尚このレポートはARFLEX JAPAN社主催の見学ツアーに参加させて頂いた時のものであるが、記述内容は完全に私のフィルターを介したものであることをご了承いただきたい。
 
そして産業とデザインとマネーを巡るミラノ取材はつづく。
 
「いいか、てめぇたち、まだまだ、話したいことはたくさんある。でもよ、これでおひらきでぇ。また来ねぇ。」
 
そんな感じで、男前は消えていった。 
N.F
 

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