仕事の息抜きに脳を休ませたいと思っていた時
pbVスタッフのA.Hが講師をつとめるデッサン教室へのお誘いを受けた。

白いカンバスに炭素の結晶で黒い層を重ねて行くという単純かつ深淵な作業。
色という選択肢はないから、「白と黒の配分」にその人の着眼が表れる。
カタチの正確さに神経質にならず、ひたすら黒の配分に集中するのだ。

A.Hが用意したモチーフはホオズキが刺さった靴。
複雑すぎるホオズキはさておき、向き合うべきは靴だ。
いや、靴の方がこちらにウィンクしている。

靴皮の光が反射する部分がカンバスの純白とするなら、靴底の隙間は漆黒の闇である。
そこには光から闇への無限のトーンがある。
「あなたにはその鉛筆で、この私を塗り上げることができるかしら?(^_-)☆」

などという、聞こえるはずのない声に導かれながら我を忘れること数十分。
何100回となく、腕をスウィングしているうちに
黒光りする泥団子の様な靴が出現した。

「鉛筆が可哀そうだから、もうそれ以上塗るのをやめてあげて」

隣の小さな女の子から鉛筆を取り上げられそうになった時、
脳がリフレッシュしていることに驚いた。

もし、複雑なホオズキに向き合っていたら、脳みそはフリーズダウンしていたに違いない。
複雑さから逃げている様ではデッサン教室の生徒としては失格だが、
人間の脳にとって、デッサンとはまさに〇〇〇なのである。
あなたも、お近くのデッサン教室で〇〇〇を見つけてください。
N.F