「1823年、イングランドの有名なパブリックスクールであるラグビー校(学校名)でのフットボールの試合中、
ウィリアム・ウェッブ・エリスがボールを抱えたまま相手のゴール目指して走り出した!」

これがラグビーの起源にまつわる都市伝説だ。

この建築をつくる時に伺った要望は次の様に要約できる。
ラグビーをこよなく愛する人たちにが、昼夜わかたず集い、語らい、明日を夢想する家であること。
デザインが英国の住宅風であることは、ラグビーの発祥と親和性があるとして、もう一つ手掛かりが必要だ。
我々はそれを冒頭の都市伝説に求めた。
もっと言うと、ボールをもって走ったエリス君の家に。

エリス君が通ったラグビー校は名門私立学校である。
家族ではおそらく伝統や規律が重んじられているに違いない。
その家の雰囲気は、簡素でありながらも品があり、北ヨーロッパの伝統を表現しながらも
現代的な佇まいも併せ持っていただろう。
一家団らんの空間は広々としてのびやかで、家の中心を占拠していたに違いない。

相も変わらす、想像すればするほど自分でハードルを上げることになるのだ。

オークや煉瓦などの古材を使い、100年以上前の家具を配することで、なんとか出来上がった。

都市伝説には続きがある。
1823年のある日、ボールを抱えて走ったエリス君は興奮冷めやらぬ状態で帰宅する。
そして、カバンを放り投げ、汚れた制服もそのままに暖炉の前に座り込む。
お母さまに愛らしい声で語り掛ける。
エリス 「今日、めっちゃすごかってん。ボールもって走ったってん。みんなポカンとしとる間に
10人抜きでゴールやーーー! あっ、喉乾いた、水くれ。」
お母さま「早よ、着替えて、顔と手洗てきなさい!カバンも片付けや! なんべん言わすんや!!」

まさにラグビーが生まれた日である。N.F