世の中にCG技術が存在しなかった遥か昔、宇宙船も怪獣も街並みもすべて職人の手によるものだった。
ウルトラマンは地球を救うため海や空や駆け回り、怪獣との死闘では容赦なく街は破壊される。
着ぐるみや模型をつくるまでは良いが、それらが動きまわり壊われる様を映像にするには
途方もない発想が必要となる。

特撮の神様と呼ばれた円谷英二の生地である須賀川市には二つの聖地がつくられている。

特撮アーカイブセンターにはかつて使われていた宇宙船や怪獣や街並みの現物が保管されている。
円谷英二ミュージアムには現物ではなく「発想」自体が展示されている。

後者の展示解説文を下に転載させて頂く。
発想に次ぐ発想を支える原動力は、夢や希望ではなく
実は「畏れや反省」であったのだ。

「英二ら怪獣の生みの親たちが、怪獣に日本古来の「自然神」あるいは「災厄神」の姿を重ねていたことは想像に難くない。
怪獣が生み出された当時は、戦後の焼け野原が「科学の力」で瞬く間に復興し、
深海や宇宙などを目指した時代。見えざる災厄の化身すら科学の英知によって鎮められと過信する、まさに科学の時代であった。
しかし、科学の力は簡単に矛先をひるがえし、戦争や核の恐怖として、人類に襲いかかることを、英二ら世代は知っていた。
それゆえ彼らは自分たちの声を怪獣にたくした。
荒ぶる化身が放つ咆哮に、戦後という過ちを二度と繰り返してはならない深い反省と警鐘を込めたのである。
戦争の悲惨さや人智の危うさを肌で感じる当時の人々はそこに共感した。
だからこそ英二らが生み出した怪獣は、ごく自然に受け入れられたのである。」
N.F