1960年の映画「アパートの鍵貸します」では、オフィスは人間を部品として扱う機械の様に描かれている。
しかし部品にも本能があり、それが無味乾燥であるはずのオフィスを人間ドラマを生み出す装置に変貌させる。云々。

それから約60年の時が流れた2022年、
コニカミノルタ社の実験現場を見せて頂いた。超高層2フロアわたり、様々な居場所がつくられている。

カフェ風、ホテル風、密室風、劇場風、キャンピング風、昭和風・・・
リラックスのための香りがする場所、会話ノイズを消去する環境音の聞こえる場所・・・
これらはすべて仕事のためのスペースである。
どのスペースが「本能に訴えるのか?」
実験台にされるのは社員の皆さんである。
居場所演出のための家具は、様々なメーカーとのサブスクリプション契約で
人気がなければ(使用頻度が低ければ)、クレンジング(解約返品)される。

「デザインよりも前に観察せよ!」という教訓は承知しているので、
この実験が何を生み出すのかには興味は尽きない。
しかし、この企業の様に「本能の観察」を楽しもうという姿勢こそが大切なのだ。

1960年の映画では、本能が無味乾燥な場所に意味を与える様が描かれた。
2022年の企業では、多様な居場所に本能がどう反応するかを観察している。

本能に任せる時代から、本能を観察する時代になった。N.F