「共有生活」考 その1

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「共有生活」は我々の造語である。そして建築の未来にとって重要なキーワードだと考えている。
個人や家族のための部屋はあるが、炊事・洗濯・食事の空間は共用する。同時にそこがコミュニティの場となる。                                        
                               
「合宿生活よりユルいが、マンションライフよりウザい。」                          
                                               
ザックりと説明すればこんな感じである。                           
                                                 
部活や血縁というつながりもなく、他人同士が楽しげに暮している実例を見学した。                                               
                                                                 
東京ど真ん中のシェアプレイス赤坂では、各人がリッチなキッチンで料理をし、談笑しながら食事を共にする。疲れたときは個室にコモる。操縦可能な他人との距離感が魅力だ。                                                                
                                                             
注目すべき点は・・・
東京電力が事業元であり、「エネルギー転換」がプロジェクトの背後に潜在していること。                               
全ては古い建築物の巧みな再利用であること。
シリーズ化のためのシナリオがあること。
                     
                                   
「オルタナティブ、シェア、コレクティブ」という呼び名で、ビジネスモデルとして注目されてはいるが、我々の興味はそこにはない。                                    
                                               
p.b.Vのイメージする「共有生活」を掘り下げてみたい。

冴えた師、逝く(追記)

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私のラグビーの師匠が82歳で逝った。
生涯をラグビーと動物生態学の研究に捧げた。そして二つの分野は師の中で、火花を散らしながら挑発しあっていた。つまり違う分野を、お互いの発想の糧として活用していたのだ。            
                                    
この考え方に私は強く影響を受けている。                                  
                                       
グラウンドでは若くて飲み込みの悪い選手たちに、毎日毎日、数十年同じ言葉を繰り返した。
                                    
    「姿勢を低くしろ」
何度この言葉を聴いたかわからない。しかし20年前には金言の真意は判らなかった。
                    
                                    
地面に重心と神経を近づけることでラグビーは格段にスピード感と緊張度が増す。                                  
建築の仕事においても同じだ。頭や口だけではモノづくりはできない。                    
生身の人間が重い材料を丁寧に扱いながらつくっているのだ。近づくべきは図面や資料ではなく、現場であり材料であり、職人の技量そのものであるべきだ。                
                                       
ラグビーはそれが地面でありボールであり相手の脚もとだったのだ。金言の真意を伝えるには時間がかかる。そのことを知り抜いた師は、あえてバカみたいに繰り返したのだ。                 
後年それを「配当のない教育投資」だと表現した。      
                                          
                                               
一方、生態学の現場でも「発想の冴え」をエッセイにした。
狂牛病の真実、ビタミンと癌細胞の闘い、人がキレるメカニズム・・・
など人間の脅威に関係し、しかも人体実験が出来ないためタブー視されたものばかりであった。                                          
                                    
「複雑な手順を圧縮し、単純化して、イチ動作でできないのか・・・」
選手時代にいわれた言葉を私は想い起こしている。
                               
故障の頻度は、部品の数に比例するのだ。これも金言であった。N.F
写真はラグビーワールドカップ2007。試合後の閉場作業。

受け継がれるもの

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曽祖父の時代から使われていた二の膳をもらった。
頑丈な木の箱に収められた10個のお膳。
横には曽祖父の名前が印字されている。
最後に使われたのが20年前の法事。
お膳の間には昭和62年の新聞がはさまれている。
何代にもわたって受け継がれるものがある。
そのいとおしさや次の世代に伝えていきたいと思わせるのは何なのか。
ものをつくる者として、常に考えさせられる。
ひとつに、モノとしての美しさがある。
道具としての機能性、耐久性、飽きのこないデザインも受け継ぐためには欠かせない要素である。
朱の塗りは夜になると色味が増し、美しさを放つ。
これは照明器具のない時代に艶やかに輝いたことであろう。
「古きよきもの」の「よきもの」にはこのような職人の技が常にあるのだ。
                            
そしてもうひとつに、何かしらの想いや特別なものが秘められている。
先祖が大事に使っていたものだからこそ、惹かれるものがある。
先祖がもてなし、手料理が所狭しと並べられたであろう。
大事なお客様がそのお膳に触れ、食し、酒を酌み交わしたことであろう。
そういった人々の想いも一緒に受け継いでいるのである。
                                                                                      
自分が受け継いだものにまた新たな愛情を注ぎ、次の世代へ受け継いでいく。
                                                                              
それはものをつくるときにも同じことがいえる。
風土や歴史、環境や考え方を身体にインプットし、熟考の上、形を生み出す。
形が生み出されるまでに考えられたいくつもの思考がモノに憑依する。
その思考は表に出ることはないが、使われることによって受け継がれていく。
                                                                               
ものをつくりながら染込む想い。
ものを使いながら染込む想い。
人々は形に憑依した想いをDNAのように受継いでいくのであろう。
Y.T.

使い続けられるものとは・・・その2

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去る6月11日、家具メーカーのカンディハウス社主催のトークイベントに出た。冒頭、カンディ社の長原会長から家具についてのアツい講話があった。お題は「vintage 使い続けられるものとは・・・」                                         
約40分間、どこか一点を見つめ、焦点を絞り込む話し方に引き込まれた。
                                          
 ・ご自身が家具の職人からスタートしたこと。
 ・ミズナラなどの広葉樹材は成長に80年以上を要するが、上質の家具製作に欠かせないこと。
 ・高度成長期の「たくさん作って、多く売る」時代は完全に終わったこと。
 ・カンディ社は「良い家具を必要な分だけつくって、必要とされる分だけ売りたい」こと。
                                                             
などが語られた。この話を受けて私は「建築の専門家」として次のことをしゃべった。
 ・明石家さんまは「自分のギャグに飽きることはない。」といったこと。
 ・彼は「常に初めての心境で」お決まりのギャグを放つとのこと。
 ・つくり手自身が面白がることの大切さ。そこにつくり手の闘いがある。
 ・「使い続けられるもの」はそこからしか生まれない。
                
音楽、ワイン、家具、街づくりの専門分野の方々からも異口同音の意見があがった。    
                          
              
会場に来ていただいた80人の皆さんにはどのように届きましたか?
持ち帰るに値する「御みやげ」ありましたか?
N.F
写真左が長原さん。

イベントのお知らせ One heart

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ロックシンガー ジョー山中さんが癌と闘っている。このイベントはその支援活動である。                   
                                                            
p.b.Vの活動拠点である創成川イーストは札幌都心にある下町である。                                   
                             
この地域を盛り上げるため市場や企業、神社や商店が力を合わせたお祭りでジョー山中さんは歌ってくれた。                              
         
                     
このお祭りでプロフェショナルとしてのジョーさんから、音楽のもつ力や感動など多くの宝を我々は頂いた。                              
                    
男としてのカッコよさ、誠実さ、行動力。                                            
                       
言葉では感謝出来ないので、チャリティーライブに参加することで感謝と激励をしたい。N.F

手と機械の協働 その1

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竹原鉄工所は札幌郊外にある。                                                                                          
ハイグレード認定の大きな空間で、人と機械は協働しながら精巧な建築の骨組みパーツを作り出している。                                                                         
長身の自動溶接機は部材を3次元的に把握し、複雑な溶接ラインに沿って間断なく作業をする。溶接の障害となるスラグ(金属かす)を自動除去するという優れもので、就業後のエラー発生時には担当者にメール送信で知らせる。                       
                                              
この様な「機械」には仰天するほどの金額がかけられているが、作業内容によっては人の「手」も不可欠である。                          
                                                                           
生産ラインの終点エリアに完成寸前のパーツが横たわっていた。精巧な工芸品が持つオーラがある。これは「手と機械の協働」が産み出したものである。美術品と表現しないのは、全ての形に役割があるからだ。
                    
耐震ブレース固定用のプレート。
窓や壁を受け止める2次部材用プレート。
コンクリートと一体化するためのスタッドボルト。
   などなど。
                        
それらの細部は地震の力を円滑に処理するために、滑らかな曲線を描いて接合されている。ここは全て人の手による。                                       
                                                                                 
産業分野において、近代化とは圧倒的な量産化の達成を意味する。その結果、機械による自動化は避けられない。                                      
しかし、ひと通りの近代化が終わった現在、産業分野において手と機械の関係性は「ジレンマと迷走」を見せ始めている。                          
                                  
横たわったピースから発せられるオーラは、「手と機械の協働」が次なる段階を求める声にも聞こえた。                             
                     
それは「ものづくりの戦場」に向かうことを意味する。                      
(本ブログ 2009.10.30「旋回する渦巻き」参照)
N.F