形は「形の種」に影響される。
「素材の持つ潜在力」が形の方向性を左右する。だから形そのものよりも「形の種」こそ重要なのだ。
使い途が一義的に限定された「建材」と区別して、我々はこの言葉を起草した。
滝澤ベニヤは芦別にある合板・突き板の製造元である。シナやカバの原木を回転させ、りんごの皮を剥くようにスライスする。それを蒸気乾燥させ積層プレスして合板に加工する。
北海道の風景としてお馴染みの白樺の合板化に取り組んでいると聞いて、工場見学をお願いした。
白樺は繁殖力が強く、広葉樹にしては急成長し40年で立ち枯れる。山林で枯れて倒れた木は他の樹木の育成の障害になり、放置すると山は荒れる。
その意味で白樺合板の量産化は、山林環境の再生として重要だ。お山の掃除を産業構造に組み込むという発想である。
量産化と消費量は表裏の関係にある。従って商品としてパワフルかどうかが問われる。
パワフルかどうかは、「形の種」としての潜在力をもっているかにかかる。
使い途を限定する「建材」にはそのパワフルさは備わり難い。
滝澤ベニヤでは色紙をサンドした美しい合板を商品化してる。角度や曲率をかけてカットして露になる断面の表情は変化に富む。
それをどの様に使うかは、アイデア次第である。
まさに「形の種」。
建築の未来にとって重要なのは、形そのものではなく「形の種」の発見と開発である。
それは近代の産業構造へのコミットという深くて、重くて、ワクワクする探検の入口なのだ。N.F