旅館風シャレー その1/凌雲閣(hotel & spa/Tokachi-Dake/ 2015- )

凌雲閣はその名のとおり、十勝岳の入口、標高1000m超にある旅館である。

周囲には圧倒的なスケールの十勝岳連峰が立ち上がる。

我々は3代目に経営のバトンが渡った2015年にはじめてここを訪れた。
以来、昭和の旅館をどう更新するかについて、長くも緩い議論を重ねてきた。
数年の沈黙の後、女将さんは決意した。
昭和の香りがする旅館の風情を残しながら、欧州のシャレー(山荘、田舎家)のテイストを加える。

客足が減る時期に工事をするというのは宿泊改装の常識だが、
標高1000mの閑散期に工事をするというのも至難である。

資材の軽量化や施工の簡素化を設計のアイデアに盛り込み、なんとか食堂の改装が終わった。

現在は客室の一部と玄関の工事をしている。
マイナス20度、積雪3m。

木と火①/マオイ道の駅リノベーション/(Camel-Coffee presents Roadside Station Renovation/ Naganuma/ 2021- )

「道の駅」は車社会が生み出した制度で、ネットによると1990年代の後半にはじまったらしい。
レストランや売店、24時間トイレもあり長距離移動者には便利な施設である。
北海道の長沼道の駅は広~い田園の真ん中にあり、
町村を超えてGoogleマップを引き伸ばすとその平原は太平洋にまで開いている。
風や陽を遮るものは何もなく、スカッとした環境を求めて
当地にもたくさんの人が訪れる。
しかし築後30年も経ったしそろそろ全体を更新するかということで、
食のプロ企業であるキャメル珈琲と長沼町がタッグを組んだ。
そして「木と火」が我々に与えられたデザインテーマである。

それをどう解釈し妄想と暴走を重ねて展開するかが、例によって問われる。

ふと書棚の古い本を開いてみたら、素敵な挿絵があった。
画家グンター・ベーマーが、枯れ木で火を起こす親友である文豪ヘルマン・ヘッセを描いたものだ。
いく筋かの線が紙に引かれただけなのに、匂いや音や熱、そして希望までもがビンビン伝わってくる。

これまでのヘビーユーザーを大切にしながらも、
「木と火」による新たなプログラムと景色をつくる所存でございます。

焦がした木や鉄で家具を大量につくる。

そうべつアグリフーズ社/旧久保内中学校玉ねぎ加工場(Onion processing plant/ Sobestu/ 2017- )

北海道壮瞥町の農業法人ミナミアグリ社と東京本社のカゴメは合資会社をつくり、
地産の玉ねぎの収穫・貯蔵・加工・販売の拠点として町内廃校中学を再活用した。
来年、全体が完成すれば校舎も体育館も校庭も余すところなく隅々まで使い切られる予定である。
まずは収穫と貯蔵の拠点が出来上がった。
人口減少社会にあって地方自治体での学校統廃合にストップはかからない。
このプロジェクトは、ポッカリ空いた学校という大きな空間を
「人の頭数ではなく、地産収穫物の玉数で」賑わいをつくりだすという
息の長い一大事業である。




ブルーな石蔵2 /kro 積丹 (Vacation meeting&Gin bar / Shakotan / 2016-2021)

歴史的な建築物の、意味ある延命は本当に難しいと実感したプロジェクトであった。
自社の資金も投入しながら、色んな人が関わることで未来につながるカタチをつくることが出来た。
GINづくりを通して積丹半島の自然と現代のビジネスをマッチングするという壮大な構想と
このささやかな石蔵はマッチングするだろうか?
してもらわなければ、こまるー。
椅子、机、カウンター、風呂、照明は香川の家具製作者の松村さんの手による。
すべてクルミの木でつくられている。

光ろ過3/空知建設会館(office renovation/Iwamizawa/ 2020 )

築50年になるこの建物は、ガラスブロックや丸まったアルミサッシ、光沢のあるタイルなど
昭和の懐かしいディテールを活かしながら、エネルギー消費を抑える内外装に改修された。

 

光ろ過=光によって人間の仕事の質が顕わにされる。

木の薄くて軽い板格子で光を拡散するというのは、ありふれた手法である。
しかし、重厚な板を上下で浮かし、左右に正確に隙間を取りながら丁寧に取り付けるという難しい施工は
「光ろ過」に十二分に耐える仕上がりとなった。






建築の教室 その2/Ciel(apartment house/Iwamizawa/ 2006-2020 )

歴史のお勉強のあとは、形のお勉強にシフトした。
複雑な街並みゆえ、貸住宅として単純な形を落とし込むか。
窓の向きを限定した形があてどもなく試される。

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しかし2010年 奇跡が起こる。事業主が降臨したのだ!!

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各住戸が独立した広いテラスと、全く窓をもたない側面で構成された最終形ができた。

 

おかしなソフトクリーム工房/小林牧場ミルクプラント(Milk processing plant/ Ebestu/ 2018- )

背後には日本屈指の原生林と懐かしい雰囲気の畜舎が残る広大な牧場跡地の中で、どこに、どうつくるか。
一方で乳製品の搬入~生産~販売の機能をどうコンパクトに整理するか。
違うスケールの課題に向き合う建築が出来上がった。
店名は「小林牧場おかしなソフトクリーム工房」
広いフィールドや旧畜舎の活用など、最近増えつつあるソフトクリーム店を超える「おかしな」構想が展開していくかっ!





「制限」をかたちに/SIL(NTT東日本 Small office reform/ Asahikawa/ 2020-2021 )

SILとはスマート・イノヴェーション・ラボの略で、NTT東日本が展開する事業名である。
直訳すると、、、冴えた・技術革新を促す・実験室。となる。

旭川中心市街地の劇場やホテル、商店が複合する「ザ・昭和のビル」の一角にある20坪の小部屋で
子供向けのプログラミング教室やスモールコワーク利用や館内のe-スポーツスタジアムとの連携を行う
設計から完成まで1.5カ月・・・

プログラミング、スモールコワーク、e-スポーツという「実験」がカタチにどう関わるのか?
考えに考えたが確信や実感が持てなかった。
しかし一方で設計期間や工事条件に関する厳しいいくつかの「制限」をどう解除するかを思案するうちにある結論に至った。

コンセプトは早い、巧い、安い。

これは我々が培ってきたリフォームの鉄則でもある。
① 早い → 工場で作ったピースを現場で素早く設置
② 巧い → ありふれ過ぎた素材に「命」与える技術
③ 安い → 早くて、巧い。。と来たらもちろんコレ

・・・知的なコンセプトとは程遠いが、「制限」を解除する我々の経験やスキルを総動員した結果、
こんな風になった。



ブルーな石蔵1 /kro 積丹 (Vacation meeting&Gin bar / Shakotan / 2016-  )

ブル―な石蔵といっても、特に建築物が気落ちしたり落ち込んでいるわけではない。
日中は白い光に満たされる空間が、日没間際にブルーに包まれるという話である。

2018年の減量改修により、倒壊の危機を免れたが、
この数年間使い方が定まらず、孤独にブルーな時間を経験していた。

一方、積丹半島のボタニカルから生まれたジンの蒸留が始まった。
ジンのラベルには積丹の海の青さが「炎」として刻印されている。
アツアツの炎が冷え冷えとした海の色で燃えるのだ。
矛盾を背負うものだけが発するオーラを感じる。
当社はこの地域発の企業を支援したい思いに加え、当社自身の仕事拠点拡張のため
石蔵に投資することにした。


ガランとした空間に舞台セットと家具を置き、パーティーや商談、仕事に兼用できるようする。

家賃や財産区分、運営利益の分配など決めないでまずは工事をはじめる。
だれに何と言われようとも「はじめる」。