光ろ過2/空知建設会館(office renovation/Iwamizawa/ 2020 )

「光をろ過する」とはどうゆうことか?
この面白そうな言葉に負けないよう、追い越されないよう、お遊びにならないよう、
そして確かな道具に出来るよう、問い続けなければならない。

これは8世紀前の教会の窓からの光。あまりに有難い。暗くてカメラで撮れないので手で描いた。
丁寧にくり抜かれた石の表面を伝いながら入って来る光は、
外の曇り空で感じた光とは違って「有難く」見えた。なぜだろう??立派な教会だからか???
この教会の石は非常に硬くて重く、建設には途方もない時間と労力と人命を要したということだ。
だから、窓を丁寧にくり抜くという作業は熟練石工にとっても修行だと言える。

私に描かせたのでは光の美しさではなく、石の表面に刻まれた仕事の質の高さだったのである。
物質の表面を伝いながら、ろ過されるのは光ではない。
恐ろしいことに、仕事の質が光によって顕わにされるのだ。

つまり、光が人間をろ過する。
なんと、恐ろしい結論。

そんな理屈をこねている間にも、現場では丁寧な光のろ過作業がすすむ。

石をピンポイントでクリ抜いて、格子の下端と床に隙間をつくることで、
光が伝い、そこでもこの現場の非常に丁寧な仕事の質を顕わにしている。

野菜で賑わえ2!/旧久保内中学校玉ねぎ加工場(Onion processing plant/ Sobestu/ 2017- )

点前左が旧校舎、点前中央が旧体育館、その向こうに貯蔵施設と加工場が並ぶ。
かつての学び舎は自分よりずっと大きな建築で包囲され、
校庭はトラックヤードとフォークリフトラインで埋め尽くされる。
農業者と企業と連携して創り出す21世紀の田園風景。
この廃校中学校の未来は子供ではなく、野菜でにぎわうのだ。絶対に。

Making of DRIVE/北海道新聞社DRIVE(co-work&share-office /Sapporo/ 2019- )

このプロジェクトの目的はアイデアや行動を生み出すための「密度」を創ることだ。
居心地の良い密度を演出するためには、デザインが偏った方向性を持たないことが重要だ。
年季の入った床や壁、
新しく持ち込まれた建材
2018年北海道胆振東部地震で倒壊した民家の床材
新聞印刷用のアルミ刷版
今風のオフィス家具
グラフィック、生け花などのアートワーク
新しいもの、古いもの、
デザインされたもの、気まぐれやアドリブできたもの…



















重心2/小林牧場ミルクプラント(Milk processing plant/ Ebestu/ 2018- )

これは牛ではなく建築だ。
人や牛の視線、風や雪や紫外線、原生林からの伏流水にさらされながら、
広い広い平原の重心に置かれたお店とプラント。
しかし、そこが重心かどうかは完成形を確かめないと誰も解らない。

お店とプラントの屋根は風雪や伏流水をかわすため、大きく二つに分けられて互いに直行している。

お店部分の屋根の下には売店とカフェが入っている。


繰り返すが、そこが重心かどうかは完成形を確かめないと誰も解らない。

光ろ過/空知建設会館(office renovation/Iwamizawa/ 2020- )

空知建設会館は1973年製。築後約半世紀を迎え耐震改修や内外装の大工事に入った。
昭和の鉄筋コンクリート造の建物を、徹底的に再利用する建設業界タマシイはかっこいい。
p.b.Vの任務はエントランスと共用通路を化けさせることである。
最近すっかり使わなくなったガラスブロックの柔らかい光だけを「ろ過する」ことがテーマである。

逆転上棟/ニセコチーズ工房(cheese factory /Niseko/ 2018- )

建設地の移動で着工が晩秋になった。ここは北海道でも屈指の豪雪地。
基礎工事は季節との競争になった。そして追いつかれた。除雪しながらの工事。
しかし、奇跡的な降雪量の少なさもあり、最後は見事に逆転上棟した。

全体を板金で素早くクラッディングし、後は内部の工事になった。

豪雪の処理を考えた大きな三角屋根の内部は、天井の高低をつくることで光や風景を呼び込むために活かした。

以下はネットから。


輪転機の余韻/北海道新聞社DRIVE(co-work&share-office /Sapporo/ 2019- )


北海道新聞社の本社は札幌のど真ん中にある。
昭和の最後の方まで輪転機が置かれ、出稿から印刷、そして配送の拠点となっていた。
交通渋滞が配送のネックになったので、輪転機は都心から離れた場所に移された。

輪転機は3階建てのビル並みの背丈と重量感がある。
かつての輪転機の痕跡がコンクリートの構造体に刻まれたまさにこの場所に
新聞社が実験的なコーワークオフィスをつくる。

コーワークやシェアは、様々な人が集って仕事をする場所で、異業種間の交流から生まれる
掛け算的な発想やコラボレーションが期待される。
働き方改革の影響かどうかはわからないが、全国には同種のオフィスが急増している。
「新聞社主催」が面白い展開に持ち込めるかどうかが運営上の課題である。
一方、かつて昼夜フル稼働していた輪転機のアツい余韻を
新たなオフィスに転写することがpbVの使命である。

Shape/ニセコチーズ工房(cheese factory /Niseko/ 2018- )

生産規模の大きなチーズ工房とお店をニセコ町につくる計画である。
①工場と店舗の組みあせ方
②大量に降る雪の処理
③奥まった建物の見え方
以上の3つが主な課題である。

まず1案考えると問題点が一目瞭然。
信じるに足るShapeをめざし、
飛び火的(あるいは泥縄式)に改善を繰り返す。

以下の9番目の模型が①②③を同時に解決する基本的なShapeである。

 Set piece/松藤医院(internal medicine clinic/ Iwamizawa/ 2018-2019)

3つの目的を3の手段で解決するのは当たり前だ。
3つの目的を1~2の手段で解決できないかと考えるのが、設計という職業の習性だ。
しかし、3つの目的を0.5~0.7くらいで解決しようとするのが私たちの困ったサガだ。

このクリニックの待合は3つの方向に開かれる。
①診察エリアへの通路。
②受付のカウンター。
③スタッフエリアへの通路。
3つの穴が必要となるが、これを1つに統合し、このクリニックの空間的なアイコンにする。
しかもコストも時間も掛けずに制度の高い工法でつくる。。。
たった1つの手段を、よりシンプルに作り上げることで、1以下をねらう。

まず試しに、ラフ模型で受付とスタッフエリアに穴をあけてみる。

つぎに必要な3つの方向に其々穴をあけてみる。

穴を1つにまとめてアーチ状にしてみる。

間口をコンパクトにしてみる。

工場で分割してきたピースを短時間で組み立ててアーチにする。

受付を中心として空間的なアイコンとして完成。サインがなくても迷わない。

シラカバの合板をプレスすることで大きな厚板をつくり
それを各ピースにカット、現場でホールダウンにより組み上げた。
カバ特有の立体感のある木目により、アーチの板厚4センチという薄さは感じない。
これがset pieceのコンセプトだ。

街のJIG /奥田歯科診療所(dental clinic/ Higashi-osaka/ 2006-2018)

【JIG】 治具。機械や家具の製作過程で、部品を所定の位置に導くための工具

この医院において長年使い込まれたマシンアートの様な技工用治具。
電気やガスやエアと連動しながら非常に精巧につくられている。
それは高度な手仕事に的確に応えるためだ。

我々が目指したのはこのクリニックの高度な手仕事と地域を繋ぐ建築である。
この精密でネンキの入った治具の様に。

「静かに目立たせる」

「中身を街に見せる」

「患者ファーストの空間をつくる」

「部屋どうしの見通しをつくる」

「チームの居場所をつくる」

街中で目を惹き、中の様子が伺え、患者の居心地がよく、
院内に閉塞感がなく、スタッフワークを創り出す建築。
これが高度な手仕事と地域を繋ぐためのJIG、その5つの目標である。

遠隔地の施工監理をサポートして頂いた仲村建築設計事務所
難しい納まりに尽力して頂いた増田工務店
残念ながらこれが今生最後の仕事となった岡平棟梁
以上の皆様に感謝申し上げます。