これが、L字型の細長いダイニングの立面の完成形である。
わずか2.7mという限られた高さに、数種類のゆるーいカーブを入れて
共用廊下に沿って’Room’を切り取った。
外出する機会が少ない人生の先輩方を如何に「密閉感」から開放するか?
この問いに向き合った半年が、包み込みと解放を拮抗させた
このワンカットに集約されている。
オアシスは各階650㎡、5階建てのシルバーハウジングである。
全体はコの字の平面形で、内側の窓際にそって庭を囲むように
L字型の長いダイニングがある。
外出する機会が少ない人生の先輩方を如何に「密閉感」から開放するか?
これが「問い」である。
手掛かりを求めて、記憶をたどると、、、
高級老舗ホテルのリッチ感はさておき、窓と椅子を一対にしている。
内部に居ながらにして、気持ちは外部に向き、長時間座れる。
でもこれだと、窓と椅子とテーブルがあれば、ハイ終了となる。
もう一つの例。
ここは窓際の天井を低くして、廊下の途中に’Room’を切り取ろうとしている。
天井+窓+家具→’Room’という関数が見えてきたが、
まだ輪郭がボケやけている。
鉄筋は「組む」という表現を使うが、実際は「編み込む」に等しい。
この5階建ての各フロア600㎡を支える壁の厚みは18センチ。
この中に縦、横、斜めの鉄筋が交差する。
それが上下左右からくるので、壁の交差点の混雑は大変なものだ。
さらに厳しいのは鉄筋を保護するコンクリートの厚みを壁の両側に3センチずつとるので、
実際は12センチの隙間に複雑な鉄筋を「編み込む」という神業が必要だ。
しかし図面では整然と表現できても、実際には簡単ではない。
巧く行かないところも多々あるが、それを「図面通りに」などと指示だししててもはじまらない。
原則は原則、現実は現実。
これを冷静に分けて考え、現場の中で空間の大きさを感じながら、
それを支える鉄筋の気持ちになりながら、矯正か妥協かを判断するしかない。
なんて、腕組みをして小難しい顔をしてたら、鉄筋が飛んでくるのでご注意を!