2000年にオープンしたブランカフェは二つの三角屋根が特徴的で目立つのだが、
国道から1キロほど入ったコンニャク畑の端っこにあるため、はじめての人は見つけにくい。
経営者も我々も、店の繁盛は信じて疑わないのだが、
最初から店舗面積を大きくするのはリスクが大きい。
「その時」が来たら、お金をかけないで空間が倍に膨らむ!
そんなウソのようなマジックのようなアイデアが必要だった。
建築のどこかに拡張用の空間を仕込めれば、、、
数か月思案して、アイデアが降りてきた。
屋根裏ーーっ!!!!!
平屋の上にのっかた大きな屋根は吹き抜けにする予定だったが、それを一部にとどめ
屋根裏として使わずに取っておくことにした。
工事の途中、私は屋根裏が閉じられる瞬間を見つめた。
その写真は、オフィスの壁にピンナップしておいた。
辺鄙な立地ゆえ、このお店が繁盛するには少し時間がかかるかもしれない。
しかし、地道で本物を求める仕事が世に広まるのは確実だ。
辺鄙な立地は話題性として、かえってその追い風になるに違いない。
かくしてお店は開店し、徐々に知られて、遠方からも客が訪れるまでになった。
そうこうして10年が経った、、、
2011年、ついにその日がやってきた。10年間閉じられていた屋根裏を開けることになった。
工事中の屋根裏 に入ると意外と広く、吹き抜けに面する穴からは光が差し込んでいた。
熟成ワインのコルクの香り?
初恋の人との久々の再会?
長年探していた楽曲の再発見?
例えがプアすぎる。例える必要もないのだが。
工事中のひんやりした屋根裏への旅は、アイデアの効果を10年かけて確認するという不思議な時間だった。
外観にはバルコニーが二つの屋根に挟まれた3つ目の三角形として付け加わった。
2階のショップ兼ギャラリーへ上がる階段は板を組み合わせて小さく軽くつくり、
基礎をつくらず床の上に乗っけた。
そして屋根裏はこんな感じ。木造の改築基準が厳しくなったので、筋違補強がショップレイアウトのアクセントとなってる。
カフェの天窓の光が、穴を介して入ってくる。