生け捕られた景色/小林牧場ミルクプラント(Milk processing plant/ Ebestu/ 2018-2021 )

「窓をつくることは、景色を生け捕ること」             絵 エドワード・ホッパー「小都市のオフィス」1953

 

私が好きな窓、その1
自宅の窓から見える「生け捕られた景色」
ビルの背中ばかりで街の様子は全く見えない。
宙に浮かんだ中庭。

 

私が好きな窓、その2
オフィスから見える「生け捕られた景色」
街の様子しか見えない。
電力会社の不愛想なビル、銀杏の木、まぶしそうに歩く人。

 

私が好きな窓、その3
行きつけ居酒屋2階の特別室から見える「生け捕られた景色」
商店街のくたびれたアーケード、業態不明の渋いお店、ほろ酔いで帰路に就くカップル。

 

小林牧場の広い敷地に向こうには深くて濃い原始林が見える。
これをどの様に「生け捕るべきか」

最終的にはこの様に「生け捕った」

美味しいソフトクリームを片手に、カウンターに肩ひじをついて、少し背中を丸めて、視線を上げれば
「生け捕られた」生きのいい景色が横たわっている。

「室」から「館」へ /津別町図書館 (Library/ Sapporo / 2020-)

屈斜路湖の西、津別町公民館の一角にある図書室。
約6万冊の蔵書の一部が丁寧に並べられている。
本との距離が近く感じるのは、並べ方に「読んでもらいたい」スピリットが注入されているからだ。

さてこの度、長年(一説によると40年間)の念願が叶い「室」から「館」にジャンプする。

図書館は単独建設ではなく、スーパーマーケットや交通ターミナル、ドラッグストアと一つ屋根の下に入る。
事業コンペでの我々の提案は、、、

決まった面積の中で機能や部屋の用途に拘束されない、自由に使える共用部を出来るだけ広くつくる。
これだけに集中した案である。

現在の図書室前にある心地良さげな漫画と新聞のコーナー。

公民館のロビーにあるので、図書室が閉まっていても自由に使える様になっている。
要するに、これだ。

まずは40年の念願、悲願の心をひたすら聞く事になる。

12Rooms/カムオンホール(clinic+day care+concert hall / Sapporo / 2007~)

デイケアを兼ねるカムオンホールはメンタルクリニックが運営している。
ホールもデイケアもクリニックもオープン以来フル稼働である。
大地震による停電の時も、現在のコロナ禍にあってもその状況は変わらない。
従ってクリニック部門の25㎡ほどの待合室は常に満杯である。

その25㎡のスペースをさらに12の部屋に分割したいという要望があった。
飛沫感染を防ぐためである。
部屋といっても、超が付くほどコンパクトにしなければ納まらない。

これは昔つくった図書館の席である。

古い椅子を板で仕切ることで「Room」にしようとした。
周囲からは丸見えだが、座ってみると不思議に個室感があり、
読書マニアの居場所となっている。

 

今回はさらにコンパクトな設計が必要だった。

幅60センチ×奥行60センチ×高さ135センチの「Room」に体の70%ほどが納まる。
このユニットを回転させながら連結し、25㎡にびっちりと充填する。

設置は1時間、しかし構想は3カ月、、
いくら図面や模型で事前検証しても、試作品を眺めてみても
最終的に立ち上がる雰囲気はわからない。
眠れない日が続いが、構想時の予想を超える魅力的な待合室が出来た。

25㎡を12に細分割することで、
全体が一望できるのに誰とも視線は合わず、
周囲からは丸見えなのに個室感があり、
行き止まりの様で先がある、、
気の利いたパズルの様な場所が現れた。