交換する丘 /緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017-2018)

法律上、2階から降り口の離れた二つの階段が必要だった。

二つの階段をX型に束ねて交叉させると、「降り口の離れた」という条件をクリアした。

階段ではなく「丘」にならないかと考えた。左右上下に風景の変化を発見しながら登る丘。

模型では丘っぽいが、このままでは人が丘の途中で落下してしまう。風景の変化を損なわずに安全策も講じたい。


思案の末、細かい鉄を編んだカゴを階段にかぶせてみた。メッシュ状の書架からは向こうが透けて、風景の展開が感じられる。書架は階段側からも使えるから、本も丘の風景の一部である。

階段中央の踊り場の真下が図書館の入口だ。

だから階段にある本は図書館のものではなく、寄贈によるものだ。

この丘は貸し出しを管理する図書館ではなく、利用者自らが育てるブックトレードの場なのだ。

緩くて長い溝 /緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017-2018)

街のメインストリートから公園に抜ける100m余りの道が建物に沿って設けられている。

庇は歩道や駐車場に水や雪を落とさないために、それ自身が樋として考えられている。

庇は工場の屋根に使う折板を長手方向に使って、それ全体を排水ための面的な樋にしているのだ。

だから水は横にこぼれない。

雨水はいったんWの谷部分に集水させて、たて樋から地中に排水している。

柱もなく、自転車も快適に走っている。


そして抑揚のある庇の下を歩くと「ある感覚」を経験する。

連続しているのに異なる部屋をくぐり抜けて行く感覚。

日本建築で言うと、欄間の下を歩んで奥に向かう様な。

抑揚のリズムと建物への入口をリンクさせて、無言のサインになればとも考えた。

大人は文字サインがないので迷うが、子供は本能的に入口に吸い込まれていく。

庇もまた人の本能を導く「緩くて長い溝」なのだ。

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「?」 VS 「!」/緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017-2018)

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このプロジェクトは中身がたくさんあって楽しそうな企画である。

図書館、コンビニ、放送局、フィットネスジム、テニスコート、屋内広場、地域支援センター、、、

室名を紙に書いてハサミで切り抜き、机の上に並べてみるだけで出来事は起こりそうだ。

でもそれでは芸も能もない。何が必要なのか?何をつくるべきなのか?

・・・なのか?・・・なのか?

そう繰り返すうち「?」に翻弄される快感が芽生えた。

かくして答えは見つかった。!   「?」をつくるのだっ!

 

1年数か月がたち、2018年4月1日開館記念日を迎えた。当日の朝、エントランスをくぐると、、、、「?」と出くわした。

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「?」を求めて③.JPG

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本棚と言えば本棚。手すりと言えば手すり。壁と言えば壁。

しかし使えば使うほど、使い方を考えさせられるもの。

それが「?」だ。

開館当日の訪問者の表情は「面白いー!」というより「?」だった。

さあ、試合開始だ。

タイムアップのない「?」と「!」の熱戦がはじまった。

content/緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017)

見世①.jpg店をミセと呼んだ時の語源は「見せ」。

店をタナと呼んだ時の語源は「棚」。

「店=見せるための棚」となるが、これを乱暴に再解釈するならcontent。

隠したい中身ではなく、積極的にひけらかしたい中身。

 

このプロジェクトには図書館やフィットネス、コンビニ、保健センター

など様々なcontentが入る建築である。

一方、この建築物は駅前通りと公園をつなぐ約100mのバイパスにもなる。

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庇の下の歩行空間には人の目線に合わせた窓が並ぶ。

そこを歩くと、、、

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 ルームランナーやハングバーと格闘する人たち

 ヨガで汗だくの人たち

 マガジンやフードを物色する人たち

 勉強にいそしむ人たち

 まちづくりの準備をする人たち

 検診車に列をなす人たち

が格子状の窓から断続的に見える。

 

消費プレッシャーをあびる大都市の商業空間ではcontent は「商品やインテリアデザイン」だが、

地方都市においてcontent は「人々が何かに向き合う姿そのもの」である・・・

と直感するがそれはなぜか!?!????

じっくり考えてみたい問いである。

  

 

働くwindow/緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017)

窓にも働いてもらわなくてはならない。

全国の「働く窓」を取材した。

 

 

江戸期の商家の窓。明らかに外敵からの防御のために働いている。

しかし、内側から見ると防火のために漆喰で白く塗られているため、光を拡散するためにも働いている。いいーねっ!

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これは日土小学校の窓。

防御の目的はもたない。漆喰で塗られているわけでもないので防火性もないし白いわけでもない。

しかし、連続する細い格子がうすいグリーンでぬられているため、内部は非常に柔らかい光に満たされる。白との違いはその場に行ってみないと実感できない。

働くwindow②.jpg

 

 

下は神戸の商業施設の窓。ガラスを支える柱の正面と奥のピースが黒と白で塗り分けられている。

つくられた時期も目的も違うが、前述の商家と小学校の例を重ねると、この窓がどう働いているかが理解できる。

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最後は昭和初期の建物のリニューアル部分の窓。

この窓も地味によく働いているように見えた。人気のカフェで、外の椅子で待つ人も多い。

さてこの窓がどう働いているか、想像してみてください。 ^_^.

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働くsteel/緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017)

この複雑なプロジェクトを進めるにあたり、建築の各パートはそれぞれ大いに働いてもらわなくてはならない。

まず全国で「働く鉄」を取材した。

まず大阪森ノ宮のキューズモール。店舗やフットサルコートやランニングトラックが

鉄骨によって支えられたり吊られたりして、利用者はその存在にほとんど気付かない。

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フットサルコートには柱がなく屋根だけが浮いているようにみえるが、、、

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実は上から吊り上げられている。人の視線から一歩下がって働く鉄の姿を目の当たりにした。

 

 

次は愛媛の日土小学校。

横揺れを防ぐ鉄のブレース。真ん中のリングがバッテンの要になってがんばる。

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でも近寄ると、、、前後ダブルになって、細い鉄筋が力を合わせてがんばっている。

鉄は引っ張っても、押し込んでも、捻っても、強いから使い方で役に立つ。

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目立たないけどwork rate の高さが鉄の持ち味なのだ。

 

提案 /緑と語らいの広場(complex/ Eniwa/ 2017)



事業提案①.jpgコンペがあり、p.b.Vは企画設計の立場で事業チームの一員として参加した。

①市所有地を民間事業者が借りる②そこに建物をつくる③出来たフロアを市が賃貸する

というすこし複雑な関係のプロジェクトである。

土地は地域の永久資産、一方建物は期限資産という行政のコンセプトに基づいている。

 

企画設計チームの我々の役目は「ローコストで楽しい」を創り出すことだ。

そのために二つの方針をたてた。

・外形を単純にすること。→まるでジョイフルAK

・内部を複雑にすること。→まるで鶴橋商店街

 

図書館を中心に子供の遊び場、保健センター、地域活動支援オフィス、クッキングスタジオ

フィットネスクラブ、屋内運動場、コンビニが同心円状に連続する。

 

間仕切り壁は本棚になっていて、各ゾーンのゲートには関係する書籍が並んでいる。

子供の遊び場にはキッズ本、クッキングスタジオ前にはレシピ―本、、、というように。

 

事業的な効果、建築のアイデア、空間の運用力から審査され

応募3案から我々の案が採択された。

 

コンペはコンペ、提案がどこまで実体になるかはわからないが、館内を歩くとこんな感じである。

↓ ↓

 
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