4年越しの解決 /札幌中央図書館Ⅱ (Library renovation / Sapporo / 2018)

2014年4月に完成した中央図書館の改修は、家具工事のみで
閲覧室全体をユーザー目線で便利にする難しい仕事だった。
結果としては入館者や貸し出し数が3割アップするという「勝ちゲーム」だった。
しかし、1カ所「負け」があった。

どんなに混んでいる日でも、ここだけはガラガラだった。
この「負け部分」について、多くのヘビーユーザーに意見を聞いてみた。
「座ったときの無防備な感じ」
「目の前の雑誌書架に惹かれない」
だいたいこんな反応だった。そして納得した。
それから無人の席を見かける度に後悔と反省の日々が続いた。

しかし4年後、再試合の機会が訪れた。
やるべきことは単純明快だった。
座席の無防備さの解消。マニアックな雑誌書架を魅力的に。


かくして4年越しの再試合に勝つことができた。

点 /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo / 2014)

中央図書館  1Antonello_da_Messina.jpgある妄想がこのプロジェクトを導いた。

 ― どんなに大きな空間も「点の力」で全体を活性化できる。

点とは、建築より小さいく家具より大きな存在。

 

画は「点」のイメージソースとなったもので、15世紀の僧の書斎である。

(St.Jerome in his study by Antonella da Mesina) 

札幌中央図書館のロビーと閲覧を合わせた面積は6000㎡であるが

ツボを抑えて的確に「点」をデザインすれば、利用者の感性を刺激し

ライブラリアン(館員)魂に火がつくと考えた。

 

 


モデル展  /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo / 2014)

このプロジェクトでは多くの家具がつくられた。

石ころみたいなもの、切り株みたいなもの、塔のようなもの、

柵の様なもの、部屋のようなもの、、、

全てが、とらえどころのないアイデアからはじまり、実体になった。

その途中の段階に位置し、輪郭や寸法に確信を与え、

館員や職人を鼓舞し、発注者の期待をあおり続けたもの。

それがモデル。

題して、モデル展! ご覧ください。 

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Trees 2  /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo )

図書資料は分類基準が決まっている。

資料を探しやすい反面、知らない本に偶発的に出会うワクワク感に欠ける。

 

最近、街の本屋さんでは分類の垣根を無くし、本の配列をシャッフルすることで

ワクワク感を演出している。

一方、公共図書館では資料へのアクセスが重要なので、

ツ〇ヤの様には行かない。

 

しかし、今回のリノヴェーションでは、木立をモチーフにした本棚をつくり

部分的にシャッフルを試みた。

 
Trees2-1.JPG医療、工学、趣味など多ジャンルを隣接させると、相乗効果があるらしく

貸出率が跳ね上がった。

書店ではないのですぐに補充はできないから、木で出来たダミー本をつくって

開いた棚を埋めるという異常事態になった。

TREE 大.jpg

Trees 1  /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo )

Tree 3.JPG

いくつかあるリノヴェーションの目的の一つは既存の閲覧室に新しい機能を加えることだ。

たとえばこの写真。今後増える電子図書をプロモートするスペース。

タブレット閲覧や電子書籍についてのレクチャーを行う。

 

「20年後、図書館から本は消え、タブレット専用WiHiと座席しかない

ガランとしたスペースになる」


担当者は言った。

このスペースはそれに向けた実験だ。



デジタル全体.jpg

くりぬかれた大木の幹の様な物体が3つあって、その中がタブレット閲覧ブースになっている。


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そして3本の幹と建物の柱の囲まれたスペースはカーテンを引くとレクチャースペースになる。

レクチャー使用以外の時は開放されていて、幹の周りは閲覧席になっている。

Tree 1.JPG

Room chair /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo)

Room chair 0.JPG

今回は「開かれた個室」のつくり方がテーマである。

 

 

「とにかく席数を増やしたいのです、たとえばここ。」

Room chair 1.jpg担当の方の説明をうけながら、これは席数以前に「例えツッコミ」をしたくなる状況だと思った。

特急の座席かっ?   101匹ワンちゃんかっ?  左むけー左っ!かっ?

 

この配置をみたイタリアの著名な図書館プロデューサーは、そのユーモラスな並びの感動ショットを撮影し、「日本人は会話ベタから目線を合わせたくないので、これでいいのでは?」と皮肉をチクリ。

 

しかしここは日本。おしゃべりマニアが集うイタリアではない。

それで、捻り出したのがこれ↓

Room chair 2.jpg

眼線を合わせたくないなら、部屋にひきコモるべし。題してRoom chair。

古い椅子をリニューアルし、その脚を差し込める穴あきの床と間仕切りからなるユニットである。

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間隔が詰まるので席数は増えるし、人に包囲されても自分の世界にひきコモれる。

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おまけに睡眠もとれ、再び読書に邁進できるのだ。

Room chair 4.jpg

マガジンWALL  /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo / 2014)

DSCF5242.JPGエントランスホールの傍らに、この様な一角があった。

児童図書の研究のためのスペースだが、利用度が低く

新たな空間利用のテーマと方法を検討した。

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この様になった。

壁はマガジンで覆い尽くされ、照明も新設された。

しかし、我々は既存の床・壁・天井には全く触れてはいない。


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「壁」のような家具をつくって、部屋の両サイドに設置しただけだ。

1ユニットには36の本が背表紙を見せて並ぶので、

36 × 6 = 216 種類のマガジンが一望できるスペースになった。

バックナンバーは足元に収納している。

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マニアにも、暇をつぶす方にも、十分耐えうる空間となった。

石庭 1  /札幌中央図書館 (Library renovation / Sapporo / 2014)

プロトタイプ.jpg京都竜安寺の石庭に座し、観想に耽る人は多い。

直線的な縁側には人がビッシリだ。

ある衝動が芽生えた。 

 - 庭に降りたい。そして石にすわらせろ、、、

 

こんな衝動からコンセプトが生まれることもある。

私の網膜には、確かに石庭の左端に具体的なカタチが映った。

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と、ここまではよかったが、この落書きを形にするのが大変だった。