桜台こども園の最近のブログ記事

ついにその日がやって来た。

構想半年、製作1か月。

木のDOKANが工場から幼稚園に運び込まれた。

ドカンに夢中5.jpg

可動出来るように8基のピースを組み立てる構造になっている。

そして出来た。。。

 

ドカンに夢中6.jpg

丁寧に接合され磨かれた堅木のパネルの質感は説明しがたい。

そして全体からはまるで大木丸太をくり抜いた様なオーラが出ていた。

色んな角度に開けられた穴からは、こどもの絶叫や這いずり回る姿が漏れ出す

デザインになっている。

 

構想は長く、製作は短く、設置は瞬時、、

子供の絶叫は未来永劫。

 

庇と縁側0.jpgこの絵は保育園のイメージソースとしてはピンと来ないかもしれない。

しかし、長いテラスとそれを守る大きな庇というテーマにはピタリとハマった。

我々は内外のデザインや技術監理のすべてを「庇と縁側」軸に整理した。

 

そして、工事用の囲いが外れて、全貌が現れた。

庇と縁側①.jpg

約50mの庇と縁側だけの外観。

将来はここが園庭の舞台の様に機能するだろう。

 

横に長いということは、熱膨張による伸縮の影響を受けやすい。

その伸縮を吸収するように窓や目地を配置した。

その結果、イメージソースであった三十三間堂の雰囲気により近くなった。

庇と縁側②.jpg

左は縁側の空間。右は工事中の屋根。

雪解けの水を縁側に落とさないために、大きな屋根をゆるいV字に折り、

中央に排水の溝をつくっている。

 

そして、この屋根の下はたっぷりとした遊戯室がある。

庇と縁側③.jpg

右側のカーブする木の壁の中には、キッチンや保育室が入っている。

 

稲妻模様のライトは、この空間をパワースポットにするための工夫である。

庇や屋根とカーブする木の壁をつくるためには、職人さんたちの技術と閃きが必要だった。

 

つくった人たちの「熱」が稲妻の様に、子供たちに伝わりますように。

DOKANに夢中1.jpgガキ大将はDOKANの上に立ちたがるが、私はどちらかと言えば中が好きだ。

高さを利用して自分を誇示するよりは、トンネル中で起こる出来事に興味がある。

上の写真は数年前につくったFRP製のDOKANの模型である。

 

屁理屈をコネさせていただけるなら、、、

二本の筒が絡み合うことで内部に複雑な経路が生まれ、それにより様々な出来事が起こる。

ドカンに夢中3.jpg

 

この大きなDOKANをつくるのに様々な試行錯誤をしたが、それは別のページに書くとして

この経験を利用して木のDOKANをつくっている。

遊戯室の間仕切りと遊具を兼ねる予定だ。

DOKANに夢中2.jpg

堅くて丈夫な北海道のカバの無垢材を駆使して、長さ1Mの筒を8本つくってつなぐ。

色んな方向にスキ間があって、出入りしたり覗いたりできる。

並べる順番を変えれば雰囲気がかわる。

堅い材料の処理の難しさもさることながら、スキ間の開け方に悩む今日この頃なでのある。

 

今必要なのは、ジャイアンではなく、のび太やスネ夫のリアルで痛くて笑えるアドバイスだ。

約50mのテラスをどうつくるか?これがこのプロジェクトの「問い」だ。

保育環境は商業施設ではないから、

大人にとっての「心地よさ」はヒントにはならない。

 

たとえば「ふしぎさ」という言葉を手掛かりに、テラス状の空間についての

私の記憶をたどると、ある有名な寺院が浮かんだ。

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京都、蓮華王院三十三間堂。

外部のテラスはバカバカしいほど、ながい。

堂内に千一体の仏像が入っているからこんな長い形の建物になったのだが、、、

 

16世紀のころ、この「ふしぎな」テラスを誰かがスポーツの場にした。 

それは「通し矢」と呼ばれ、一昼夜をかけて、床壁天井に触れることなく、

端から端へ矢を射て、到達した総本数を競うのだ。

 

正面から見ると、、、

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本当に、そんなことが出来るのか??

立面図を描き起こしたら、なおさら信じられなくなった。

しかしサムライには出来たのだ。

それも一人で何千本も。その競技は大流行した。

 

つまりこの伝説は「ふしぎさ」の効用だといえる。

「ふしぎさ」を放置できないのがヒト。

「ふしぎ」だから妄想し、「ふしぎ」だから自らの力でその空白を埋めたくなるのだ。

 

この「ふしぎさ」という感覚が子供の環境にとって大切なのではないかと、

次第に実感するようになった。

 

京都で流行した通し矢は、江戸にも飛び火し、京都の建物が深川あたりにコピペされた。

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歌川広重による深川三十三間堂の挿絵。

ここまで抽象的だと、建物何だか、塀なんだか、それさえよくわからない。

 

いやそれだからこそ、この絵の中にも何かヒントがあるのである。 

子供に伝染する「ふしぎさ」、、、難しい問いである。

 

ダメージキャッチャー1.jpg

建築は様々なダメージを受ける。

時には跳ね返し、時にはかわし、時にはだまし。

そのための合理的な部位の関係性を考え抜くのが面白い。

色んな部位がダメージを受けるのだが、その一番手は屋根だろう。

 

伊勢の神殿のように、屋根は完成時にはこんなにも美しい。

 

それが20年経つと、、、

ダメージキャッチャー2.jpg

左が建て替え後のもの、右が20年を経たもの。

茅葺とはいえ、相当なダメージを受ける。

しかし、そのダメージは熱や紫外線や降雨のエネルギーを屋根が吸収したからで

その代わりに荷重や揺れのエネルギーを吸収する壁や柱、床や基礎が守られる。

 

このプロジェクトは、低くて長くて細いコンクリートのプロポーションになる。

だから、地震のネジレや熱の収縮膨張にさらされる。

それを吸収するのは基礎や壁であるから、屋根が重要ということになる。

 

式年遷宮後の状態を観察して、ダメージキャッチャーとしての屋根を構想することにした。