神戸女学院デザインプロモートの最近のブログ記事

ヴォーリズは校舎のありとあらゆるところにグラフィックパターンを貼り付けた。

まるで呪文のように。

それらは無限に繰り返されても飽きないどころか、訪れた者への秘密のささやき

の様でもある。

 

我々はその「ささやき」を丁寧になぞることからはじめた。

写経という東洋の業を通じて、西洋の伝道の核心を体得する試みだといえる。

 

実際は、楽しいからやるのだが、、、

 

 

まずはステンシル(型抜き)によるパターン。

色ノリは均一だが、カタチと色と隙間がリズミカルだ。

 

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次はタイルワークによるパターン。

陶器であるため、焼成による色むらやグラデーションが活かされている。

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ウィンドウパターン。アーチを並列、相似、複合させて展開している。 

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色や形や素材を駆使して、ここまで多様なパターンを編み出すのはcrazyだ。

もはや、ささやきというより福音だ。

 

建築家ヴォーリズは、様々なレベルのものづくりに取り組んだが「建築」だけはやらなかった。

(言いたい放題だが、、、)

その理由をザックリいうと、ヴォーリズは建築家ではなく「大建築家」だったから。

(言いたい放題にもほどがあるが、、、)

 

大地を裂き、柱を打ち立て、壁に穴を穿ち、屋根で覆い、必要とあらば全体を浮遊させる・・・

妄想と暴走しがちな建築家なら、構築物としての建築にこだわるはず。

しかしヴォーリズはもっと大きな妄想と暴走を望んだ。

ヴォーリズへの旅3  ①.jpg 屋根のダイナミックな形状より、スペイン瓦の色にこだわった。

オリジナルの瓦が失われても、アイコンの様に再生が可能だ。 

 

  

ヴォーリズへの旅3 ②.jpg

壁面そのものの形状より、タイルの生産方法にこだわった。

タイルにはスクラッチ(引っ掻き溝)が入っていて、

一枚一枚の色調が微妙に違うため、全体がシンプルな幾何学模様でも単調な印象を与えない。

  

 

 

ヴォーリズへの旅3 ③.jpg

そして、窓から見える風景よりもガラスそのものにこだわった。

大きな面で構成された型板ガラスで、顔料により黄金に光る。 

  

 

 

ヴォーリズへの旅3 ④.jpg扉よりも建具金物にこだわった。

そこには校舎のイメージやアーチ窓のデザインが施されている。

大きな建築が、小さな取っ手の中に封印されることで、

学生と教員が扉をクグる度に校舎を「撫ぜる」という奇跡の行為が起こる。

 

 

そして大建築家の究極の証しはこれだろう。

ヴォーリズへの旅3 ⑤.jpg

 図書館の天井にはカラフルなアラベスク模様が入っている。

型紙を切り抜いて、色を塗るという単純な工法で出来ているが、

これがアイコンとしては有名で、学生にも浸透している。

 

建築物そのものより、部位にこだわわるヴォーリズだが、これは部位というより

取り外したり剥がすことも出来ない。

 

この様なこだわりが、ヴォーリズの死後に産み出したものは、、

 ・校舎増築やメンテにおいて、オリジナルデザインの継承が安価で容易になったこと。

 ・阪神淡路大震災などの災害復興時にもオリジナルイメージの再生が容易だったこと。

 ・見慣れ、親しまれる瓦やタイルや模様は、アイコンとして世に流布しやすいこと。

 

ヴォーリズの妄想と暴走の本質は、構築物としてのオリジナリティが評価の対象になる「建築遺産」という重ーい課題を複製可能のアイコンによって、完全に開放することだったのだ。

 

「永続性」の必殺技といわれる伊勢神宮の式年遷宮より、もっと軽快で愉快なこの方法を

発見したところで「ヴォーリズへの旅」は終わり、今度は我々がつくる番が来たのである。

ヴォーリズへの旅2  ①.jpgこぶりのチャペルに入ると、堂内は神々しい黄金の光に包まれていた!

黄金はステンドグラスと壁面の色の掛け算で出来ているのはわかった。

さて壁面の石の産地は? なんてマニア風なことを考えていたら、見事一蹴された。

 

石の空間にしては、ヒヤリとした硬質な感じがない。

むしろ、暖かい。近づいてみると、、、

ヴォーリズへの旅2 ②.jpg 石に見えていた壁は、土と砂とセメントで出来ていた。

目地も凹凸も左官職人のコテによるものだった。

 

ヨーロッパの伝統的な空間が、日本の職人技術によって再現されていたのである。

続いて前方に眼を向けると、

ヴォーリズへの旅2 ③.jpg

アーチ奥の説教壇には不思議な窓と小さな十字架が見える。

 

ヴォーリズへの旅2 ④.jpg

7本の蝋燭をモチーフにした窓と、怪しく光る十字架。

ヴォーリズへの旅2 ⑤.jpg

十字架は真鍮板で出来た弁当箱のようなカタチのものだった。

 

数分間の体験を整理すると、、

石に見える砂、 蝋燭型の見慣れない窓、 弁当箱十字架、、、

 

ここでヴォーリズがどんなヤツか理解できた。

柔軟性。冒険心。遊び。 

 

戦後の資材不足の中、キリスト教の極東流布というミッションを日本の伝統技術の助けを

借りて達成するというパラドクスを生き抜いたナイスガイ、、、

 

再び一枚目の写真にもどっていただいたら、礼拝堂に見えていたものが

茶室の様な柔らかい空間に感じられるのではないだろうか。

つづく。

配置図.jpg2011年11月7日、縁あって神戸女学院のキャンパスを見せて頂いた。

1934年に巨匠ヴォーリズが丘陵地に設計した学校だ。

 

ヴォーリズは建築家としてはかなり規格外の男で、

独学の建築家で、事業家で、社会活動家で、宗教家で、、、

守備範囲が広すぎて、学術的な位置づけはかえって難しい。

しかし、逸脱を尊び、脱線癖のある私はその守備範囲の広さにこそ共感してきた。

 

キャンパス風景.jpg

校門をくぐって木立に囲まれた丘をあがると、そこはヴォーリズの世界。

品のある校舎が回廊と庭園でつながれている。

日本人がヨーロッパの伝統的な様式に囲まれると、つい無条件降伏してしまう。

しかし、降伏なんかしている場合ではない。  

 

規格外の男ヴォーリズは伝統的な様式からどう逸脱したのかっ!

それを見極めることがツアーの目的なのだから。