2015年12月アーカイブ

屋根裏①.jpg2000年にオープンしたブランカフェは二つの三角屋根が特徴的で目立つのだが、

国道から1キロほど入ったコンニャク畑の端っこにあるため、はじめての人は見つけにくい。

経営者も我々も、店の繁盛は信じて疑わないのだが、

最初から店舗面積を大きくするのはリスクが大きい。

「その時」が来たら、お金をかけないで空間が倍に膨らむ!

そんなウソのようなマジックのようなアイデアが必要だった。

 

建築のどこかに拡張用の空間を仕込めれば、、、

 

数か月思案して、アイデアが降りてきた。

屋根裏ーーっ!!!!!

 平屋の上にのっかた大きな屋根は吹き抜けにする予定だったが、それを一部にとどめ

屋根裏として使わずに取っておくことにした。

屋根裏②.jpg

 

工事の途中、私は屋根裏が閉じられる瞬間を見つめた。

その写真は、オフィスの壁にピンナップしておいた。

 

辺鄙な立地ゆえ、このお店が繁盛するには少し時間がかかるかもしれない。

しかし、地道で本物を求める仕事が世に広まるのは確実だ。

辺鄙な立地は話題性として、かえってその追い風になるに違いない。

 

かくしてお店は開店し、徐々に知られて、遠方からも客が訪れるまでになった。

そうこうして10年が経った、、、

 

 

 

 

 

2011年、ついにその日がやってきた。10年間閉じられていた屋根裏を開けることになった。

屋根裏③.jpg

  

工事中の屋根裏 に入ると意外と広く、吹き抜けに面する穴からは光が差し込んでいた。

 熟成ワインのコルクの香り?

 初恋の人との久々の再会?

 長年探していた楽曲の再発見?

例えがプアすぎる。例える必要もないのだが。

 

工事中のひんやりした屋根裏への旅は、アイデアの効果を10年かけて確認するという不思議な時間だった。

屋根裏④.jpg 

外観にはバルコニーが二つの屋根に挟まれた3つ目の三角形として付け加わった。

屋根裏⑤.jpg

 

2階のショップ兼ギャラリーへ上がる階段は板を組み合わせて小さく軽くつくり、

基礎をつくらず床の上に乗っけた。

屋根裏⑦.jpg

 

そして屋根裏はこんな感じ。木造の改築基準が厳しくなったので、筋違補強がショップレイアウトのアクセントとなってる。

カフェの天窓の光が、穴を介して入ってくる。

屋根裏⑥.jpg

建築家ヴォーリズは、様々なレベルのものづくりに取り組んだが「建築」だけはやらなかった。

(言いたい放題だが、、、)

その理由をザックリいうと、ヴォーリズは建築家ではなく「大建築家」だったから。

(言いたい放題にもほどがあるが、、、)

 

大地を裂き、柱を打ち立て、壁に穴を穿ち、屋根で覆い、必要とあらば全体を浮遊させる・・・

妄想と暴走しがちな建築家なら、構築物としての建築にこだわるはず。

しかしヴォーリズはもっと大きな妄想と暴走を望んだ。

ヴォーリズへの旅3  ①.jpg 屋根のダイナミックな形状より、スペイン瓦の色にこだわった。

オリジナルの瓦が失われても、アイコンの様に再生が可能だ。 

 

  

ヴォーリズへの旅3 ②.jpg

壁面そのものの形状より、タイルの生産方法にこだわった。

タイルにはスクラッチ(引っ掻き溝)が入っていて、

一枚一枚の色調が微妙に違うため、全体がシンプルな幾何学模様でも単調な印象を与えない。

  

 

 

ヴォーリズへの旅3 ③.jpg

そして、窓から見える風景よりもガラスそのものにこだわった。

大きな面で構成された型板ガラスで、顔料により黄金に光る。 

  

 

 

ヴォーリズへの旅3 ④.jpg扉よりも建具金物にこだわった。

そこには校舎のイメージやアーチ窓のデザインが施されている。

大きな建築が、小さな取っ手の中に封印されることで、

学生と教員が扉をクグる度に校舎を「撫ぜる」という奇跡の行為が起こる。

 

 

そして大建築家の究極の証しはこれだろう。

ヴォーリズへの旅3 ⑤.jpg

 図書館の天井にはカラフルなアラベスク模様が入っている。

型紙を切り抜いて、色を塗るという単純な工法で出来ているが、

これがアイコンとしては有名で、学生にも浸透している。

 

建築物そのものより、部位にこだわわるヴォーリズだが、これは部位というより

取り外したり剥がすことも出来ない。

 

この様なこだわりが、ヴォーリズの死後に産み出したものは、、

 ・校舎増築やメンテにおいて、オリジナルデザインの継承が安価で容易になったこと。

 ・阪神淡路大震災などの災害復興時にもオリジナルイメージの再生が容易だったこと。

 ・見慣れ、親しまれる瓦やタイルや模様は、アイコンとして世に流布しやすいこと。

 

ヴォーリズの妄想と暴走の本質は、構築物としてのオリジナリティが評価の対象になる「建築遺産」という重ーい課題を複製可能のアイコンによって、完全に開放することだったのだ。

 

「永続性」の必殺技といわれる伊勢神宮の式年遷宮より、もっと軽快で愉快なこの方法を

発見したところで「ヴォーリズへの旅」は終わり、今度は我々がつくる番が来たのである。

200万人都市札幌が生まれる直前の姿を、庁舎ロビーにどう出現させるか?

海路や水路を経て原野に運び込まれた都市建設の用材は、荷揚げされた近辺で

寝かされ、あるいは立て掛けられていたに違いない。

 

まずは寝かされた用材の姿を手掛かりに長椅子を考えた。

  長椅子.jpg

カラマツの集成材とステンレスの板で出来ている。

 

つぎに立て掛けられた用材から着想を得て、テーブルスタンドをつくった。

斜材テーブル.jpg

大きな用材の陰で一息つく。そんなコンセプトである。