2015年3月アーカイブ

お元気ですか?.jpgこの家が出来た時、心の底から喜んで頂いたことを覚えてます。

北からの光が、寺の本殿の背後から入ってくる様子に我々も感動しました。

お元気ですか?2.jpg

 

女性の一人暮らし故、防犯上開閉する窓を少なくしたいという要望が通気のスリットや隠しポストのアイデアにつながり、それがこの家の居心地の良さにつながったのだと思います。

 

車庫の横の黒い板の隙間がポストと通気口になっているなんて、あなたと郵便局と新聞配達と工務店と私しか知りません、、、って結構しってるやん!

 

 

 

ハウスメーカーや建材会社や住宅建築家の方などのもつ情報やスキルは、どんどん複雑化、専門化し、家をつくることはクライアントにとっては楽しみな反面、苦行になりつつあります。

p.b.Vはこの状況の中で家の設計に直面した時に非常に悩みます。求められるものが複雑で、それがクライアントの幸福につながるとは思えないから。

あなたの家を思い起こしながら、この様な家をつくる機会にいつかめぐり合いたいと夢想する今日この頃です。

難病が発症しないことを祈りつつ。

 

お元気ですか?3.jpg

 

壁と口1.jpg

「自然光」と「平らな家」という言葉は、1年後この様な外観を生んだ。

難しいのは壁と開口の関係だった。

カッコよく、、、という意味ではない。

 

 ・水の落下に逆らわない効率的な壁と開口の設け方とは?

壁と口2.jpg

手前はp.b.Vの「丹後 海の家」。奥は隣地民家である。

12尺を超える壁の継ぎ目は上から重ねるように貼られている。

屋根から基礎に下るに従い、エレメントは順に奥に引っ込んでいくのである。

「丹後 海の家」はこの考えを転写している。

 

天から地への連続を意識した近世の大工の冴えに学びながら、

車庫と窓のための大きな開口を壁に納めた。

 

p.b.Vの詳細図は、工務店との加筆合戦の末、

近世大工の冴えは北国の小さな家に転写された。

  壁と口 3.jpg

 

間取とメモ1.jpg

間取とメモ書きとともに仕事の依頼が来ていた。

170㎡の四角い土地に100㎡くらいの家をつくるという内容で、

その詳細は以下のようなものだった。

 ・北側に向いた敷地で、南と西に隣家がせまっている。 しかし「自然光」を十分にとりたい。

 ・難病にかかっていて、数年後には歩行困難になる可能性がある。だから「平らな家」にしたい。

   

我々は鉛筆で描かれたギコチナイ間取と切実でシンプルなメモを見ながら

数か月間迷走した。

光庭をつくったり、天井高さを切り替えたり、トップライトをつけたり、、、

 

アイデア合戦に飽きたところで、依頼メモに戻った。  間取とメモ2.jpg

  「自然光」がたくさん入る「平らな家」

問いであったはずの言葉が、そのまま答えとなった。

 

北側道路の反対側は大きな寺の境内であった。

北側に大きな高窓をもつ、背の高い平屋。

窓からは寺の大屋根と緑が見え、北の天空光が流れ込む。 

 

考えるに値する「単純さ」に行きついたのだ。

before 1.jpg物事にはbefore/afterがある。

変化についてのbefore/afterも重要だが、

「在るか無いか」についてのbefore/afterの違いは大きい。

この写真は田本研三という写真家が撮影した1871年の札幌の建設風景。

なんと、何にもない原野にトンカンつくった街なのである。

これを「創造的」と言わずしてどうする。

 

我々が札幌市庁舎ロビーのリノヴェーションの手がかりに飢えていた時に

この写真に出くわした。

それで、ずーっとこの風景を見続けていたわけだが、、、

before2.jpg この風景に入り込み、街をつくっている気持ちになってみると

ある疑いようのない事実に思い当たった。

 

開拓労働者はどこで休憩していたのか?

おそらく、大きな資材を立て掛けたり、寝かせたり。

その傍らで、は休憩していたに違いない! 

 

その実感がこの絵に化けた。

これが現代都市の中に、beforeの風景を創り出す試みに発展していった。

音1.jpgこの空間のテーマは「光」。。。のはずだった。

それがいつの間にか「音」になったという、こわい話をしなければならない。

 

この建物は精神科のクリニックとデイケアからなっている。

デイケアのスペースは中庭と高窓に挟まれており

街中の立地を感じさせない配置になっている。

空間使用の性格上、「光」を部屋全体に柔らかく拡散させることに苦心した。

音2.jpg

光の拡散について研究を重ねている時、この空間をコンサートにも使いたいことを告げられた。

光は原始的な方法で予測できても、音は無理。

しかし、音響設計の専門家をプロジェクトに入れるお金も時間もない。

 

不安で、不安で、、、

しかし、泣き言もいってられないので、次の仮説にすがることにした。

―音も光も波。光を拡散できれば、音も拡散するにちがいない。

 

この暴力的な仮説に従い、光源を拡散する天井のカタチを考え出した。

音3.jpg

高窓の光を両サイドの「八の字型」の天井と床の水平面でできる三角形に当てながら、

減衰拡散させる。

音4.jpg

この様な断面になった。

音の拡散なんて、本当はどうなるのか全くわからなかったが、

そんなことは、決して口には出さないのであります。

編み込む.JPG

鉄筋は「組む」という表現を使うが、実際は「編み込む」に等しい。

この5階建ての各フロア600㎡を支える壁の厚みは18センチ。

この中に縦、横、斜めの鉄筋が交差する。

それが上下左右からくるので、壁の交差点の混雑は大変なものだ。

さらに厳しいのは鉄筋を保護するコンクリートの厚みを壁の両側に3センチずつとるので、

実際は12センチの隙間に複雑な鉄筋を「編み込む」という神業が必要だ。

しかし図面では整然と表現できても、実際には簡単ではない。

 

巧く行かないところも多々あるが、それを「図面通りに」などと指示だししててもはじまらない。

原則は原則、現実は現実。

これを冷静に分けて考え、現場の中で空間の大きさを感じながら、

それを支える鉄筋の気持ちになりながら、矯正か妥協かを判断するしかない。

 

なんて、腕組みをして小難しい顔をしてたら、鉄筋が飛んでくるのでご注意を!