恒久的仮設

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1st.Roomにおいて風は強くそして変化は火急である。人間は長時間、風にさらされると体温と体力を奪われる。建築も同じことだ。そこで遮蔽装置が必要になる。
沿岸の建築を見て気づくことは、常に吹き続ける風から身を守る仕掛けにしては、遮蔽装置の構えが仮設的であることだ。
いくら頑丈に構築しようとも、その寿命をあざ笑うかのように風は容赦なく、しかも未来永劫吹き続ける。そして人間が恒久的だと考えている建築は確実に屈する。
ここで発想が必然的に転換し、唯一ともいえる対抗手段「仮設」という謙虚で冴えたアイデアが生まれる。その結果、脆弱だが簡便に補強し続けて行くための、ありふれた素材と工法とが選択される。
つまり「恒久的な仮設」という矛盾を孕む建築の未来形。
この遮蔽装置は家の周囲に使い途を限定しない柔軟な中間領域を生みだしていると同時に、風圧の低減のために開けられたスリットは外を覗うための仕掛けともなっている。決して塀を挟んだ両側のコミュニケーションを意図するような安易な発想からではない。
守るべき対象である家本体より、塀の寿命が長いという事実を街並みの中に認める時、都市に住む人間の頭の中では「仮設」に対する概念の倒錯が一瞬起こる。しかしこれが、建築の未来形にとって「熟考すべき糧」であることにすぐ気づくにちがいない。

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