2009年10月アーカイブ

恒久的仮設

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塀の家.jpg
1st.Roomにおいて風は強くそして変化は火急である。人間は長時間、風にさらされると体温と体力を奪われる。建築も同じことだ。そこで遮蔽装置が必要になる。

沿岸の建築を見て気づくことは、常に吹き続ける風から身を守る仕掛けにしては、遮蔽装置の構えが仮設的であることだ。
いくら頑丈に構築しようとも、その寿命をあざ笑うかのように風は容赦なく、しかも未来永劫吹き続ける。そして人間が恒久的だと考えている建築は確実に屈する。

ここで発想が必然的に転換し、唯一ともいえる対抗手段「仮設」という謙虚で冴えたアイデアが生まれる。その結果、脆弱だが簡便に補強し続けて行くための、ありふれた素材と工法とが選択される。

つまり「恒久的な仮設」という矛盾を孕む建築の未来形。


この遮蔽装置は家の周囲に使い途を限定しない柔軟な中間領域を生みだしていると同時に、風圧の低減のために開けられたスリットは外を覗うための仕掛けともなっている。決して塀を挟んだ両側のコミュニケーションを意図するような安易な発想からではない。

守るべき対象である家本体より、塀の寿命が長いという事実を街並みの中に認める時、都市に住む人間の頭の中では「仮設」に対する概念の倒錯が一瞬起こる。しかしこれが、建築の未来形にとって「熟考すべき糧」であることにすぐ気づくにちがいない。



Milestone

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沿岸の囲い2.jpg
ハボロからノッシャップに至る海岸線は100km超にわたり途切れなく緩やかに連続する。この海岸線に沿って移動するとき、人間の身体的尺度を凌駕する距離感があらわれる。かつて海路によってホッカイドウ北西部にアプローチした人々にとっては無辺の沿岸線に当惑したことだろう。

大きな河川や特異地形は勿論のこと、海辺に偏在する集落や建物は延々たる海岸線を細分化し整理してくれるMilestoneなのである。

気の遠くなるくらい長い「線」上にあるからこそ「点」は意味と輝きを放つ。近距離においては建築は内側に生活を包む「容量」として存在するが、遠望するほどの外部にあっては人間を導く「点」に還元されるのだ。

「極度に相対化してみよ。知り得る建築の意味と価値を見失うほど。」スーパースローカーブな北西沿岸線は、都市生活でナマった尺度感覚に一喝をくれる。

No Limits No Control

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クック1779.jpg
過去2回の大航海により南半球全域の状況をほぼ確認していたJamesCook探検隊は、1776年大英帝国の命により最後の未確認地帯に向かった。

「果てが見えないなら、どこまでも」・・・イギリスより大西洋を南下、アフリカ大陸南端からオーストラリア、ニュージーランドを通過し、ハワイ諸島を経由して一路北上。ベーリング海峡をくぐり北極圏に入る。

加藤肩吾の描いたホッカイドウが未知の磁力により北東に伸び上がるように変形していた18世紀末、Cookは既に北極圏に到達し、時には上陸しながらも執拗に情報を獲得した。糸の切れた凧のごとくベーリング海を激しく振動している航路がそれを示している。

目先の領土ホッカイドウの地勢把握に苦闘する日本。地球の地勢をほぼ手中にしていた英国。そんな騒々しさの犠牲になりつつある先住文明と奔放な自然環境。   
この三局の重なりに位置していたホッカイドウは、現代において「近代化」を検証する状況証拠である。そしてそれは建築の現在過去未来の語り部であることも意味する。