2014年3月アーカイブ

小さな建築 VS 工場長.jpg
工場長 「ここ数週間、自分が何屋かわからなくなってきました。」
私   「家具屋では?」
 
工場長 「家具屋だったはずだが、わからなくなってきました。」
私   「それはなぜ?」
 
工場長 「一体何をつくっているのかがわからない。家具なのか、部屋なのか。。。」
私   「何だっていいじゃないですか。」
 
工場長 「でも考えたのはあなた方ですよね?」
私   「我々にも、これが棚なのか檻なのか塔なのかわかりません。」
 
工場長 「考えた本人にもわからないのですか?」
私   「なんだっていいのです。喜んでもらえれば。」
 
工場長 「家具屋の究極の目標もそこです。喜んでもらうことです。」
私   「では、みんなハッピーということで。」
 
 
昨年、札幌市中央図書館のリニューアルの設計を開始したときから、 
我々は建築事務所であることを捨てた。
図書館を森にするという目的に向かって、もはや自らの職域なんてどうでもよかった。
 
それが棚なのか、柵なのか、塀なのか、檻なのか、塔なのか、それは大した問題ではない。
森の中で本と出会い、木立に囲まれて本を読む。
それに向かって人を包むカタチを容赦なく捻り出した。
 
勢い余ってキャラクターをつくり、エプロンをつくり、缶バッチや図書カードもつくった。。。。
 
やれることは何でもやろうと決意して仕事にとりかかったからだ。
 
 
得体の知れない製作物を引き受けてくれたカンディハウス社と丸愛ファニチャー社には感謝しております。
 
4月2日のリニューアルオープンに向け、 
ネジレたり、歪んだり、回転したり、反転したり、組み合わさったり、 
複雑な形状をもつ100以上の「小さな建築」を製作するために 
工場長の悩める日々は続く。
 
例によって、我々は見守りそして祈るしか手がない。
N.F
 

魅力的な不可解さ

|
映画セットの様な.jpg
長年、眺め続けている古い写真がある。1940年代の町の風景だ。
 
チョット見てわかること。。 
  - 二つの建物が隣り合っている。
  - 殆ど同じ大きさで、外観もよく似ている。
  - 2階には楽しげな看板が連続している。
  - 通り沿いはガラス戸になっていて、中がよく視える。
 
全体的な印象としては、連続するお店が楽しげな街並みをつくっている。
 
楽しげな街並み。 
そう。楽しげな。
楽しげな。。。
 
楽しげな?
 
実は、この写真に惹かれた理由は「楽しげな」ではなく、 
「魅力的な不可解さ」であったことを告白する。 

  - 建物の形状や高さが微妙にちがう。
  - 屋根のデザインも違う。
  - 軒の高さもズレている。
  - 2階の窓にも違いがある。
  - 突き出た看板の後ろの外壁には元々「〇〇商店」などの屋号が貼られている。
 
そして何よりも最高に不可解なのは、2階は住居なのか?事務所なのか?
この建物は木造なのか?石造なのか?
 
しかし一方で、その不可解さは魅力的な風景演出の要因にもなっているのだ。
 
その「不可解さ」の魅力を例えるなら、優れた映画セットのようだといえる。
観る人の想像力をかき立て、未知のストーリーに誘うには「不可解さ」は絶対条件だ。

 
そんなことを考えながら、ずーとこの写真をかれこれ10年以上も見つめ続けてきた。

 
最近、偶然にもほとんどこの写真と同じ場所で建築をつくることになり、
大体の姿が出来てきた。
 
写真を握りしめていたのは無駄ではなかった。
連続しながらも、微妙に違う輪郭や窓、軒や屋根。
今後商売の発展とともに看板が掲げられるための余白。
 
写真から吸い取った「魅力的な不可解さ」のすべてを投入した。
 
 
寒風が吹く岩見沢の駅前で4月の開店に向け、職人さんたちの闘いの日々が続いている。
 
設計屋がなんだかんだゴタクを並べてみても、建築は現場の労力の賜物なのである。 
m(._.)m
N.F