2012年4月アーカイブ

洗脳空間

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クライアントやユーザーを「共犯化」するために、企業は深い理念と高い技術で顧客を「洗脳」する必要がある。
 
そのために各社は企業ミュージアムをつくる。
これは世界中の現代企業に共通する仕掛けだろう。
 
求められるのは「明快さ」である。
 
 
取材した3社は、提示すべき理念と技術を以下のように考えている。
 
①Molteni&C社(写真左) ・・・新素材によるデザイン開発への挑戦
②Riva社(写真中)     ・・・手仕事による伝統技術のモダナイズ
③PAOLA LENTI(写真右)・・・技術、ポップさ、生活感の融合
 
 
 
各社はミュージアムに「明快さ」を与えた。
 
①AVツールを利用した現代的な空間。
②伝統工具の膨大なコレクションを見せる簡素な倉庫空間。
③遊び心のあるアイテムを展示する修道院の中庭や礼拝堂。
 
 
 
ザックリすぎる表現で整理すると、各社に共通するのは、顧客を洗脳するために
二つのことに骨身を削っているという事実である。
 
まず   「どうつくるか」
つぎに 「どう見せるか」
 
 
今回の3社は全くスタンスの異なる理念をもっているので、序列化はできないが
「どうつくるか」と同じくらいに「どう見せるか」にアイデアとお金を投入していることは事実だ。
 
ミュージアムを出た時、濃密な空間演出によりつい「洗脳」されかかっていたことに気付く。
いい企業ミュージアムにはミイラ取りをミイラにしてしまう危険さがある。
 
敵を取材に行っているのに「好き」になってどうすんねん。
N.F

Rosso

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「はい。おはようございます。」
 
颯爽と現れたのはRiva社の案内担当Lさん。
赤いジャケットに身を包んで、てきぱき工場内を説明してくれた。
 
「なんでも質問してください。」
 
聴きたいことが山ほどあったが、とりわけ気にかかったことがある。
-なぜジャケットが赤いのか?
-社のロゴも赤いが関係あるのか?
 
しかし、わざわざ日本から来た割りに頭の悪そうな質問に思えたので、他のことを聴いた。
 
「この工場の武器はなんですか?」
 
「手仕事を大切にしてることです。」・・即答だった。
 
 
 
板材の仕上工程に歩みを進めると、職人さんが集中して仕事をしている。
 
「はい、質問はありますか?」
 
 
-また赤やんっ!赤着てるやんっ!
 
しかしここでも心に呟くにとどめた。
 
 
工場規模は大きくないが、「機械より手作業を」の姿勢はビンビン感じる。
かなり好感をもてる雰囲気だ。
私好みとしかいいようがない。
 
機械と手作業の融合についてはかねてより興味をもっていた。
 
「量産性と一品性」が何を生み出すのかはp.b.Vのテーマでもある。
 
手作業の「量と質のバランス」を注視しながらさらに進む。
 
 
 
そしていよいよ組み立て直前の完成パーツが積まれたゾーンに入った。
 
「はい、質問はありますか?」・・・工場長がいった。
 
-うわっ!ここも赤い布やんっ!
 
さすがにこれ以上赤について聞かないのは私の正義感が許さなかったし、聴かないと "気の利かない日本人ネ"思われそうだったので聞いてみた。
 
「なんで、赤い布で覆われているのですか?」
 
「神聖な手作業を祝福する赤です」・・・即答だ。
 
 
日本でも、生まれたての子供を「赤ちゃん」といい、還暦を「赤」で祝う。そして人間が初めて感知する色が赤だと言われている。
人類史上でも赤は「餌や血、危険」を感知するため、進化の初期に見分けられるようになった色である。
 
 
赤とは・・・誕生、神聖さ、危険感知
 
生死の象徴としてのカラーである赤をマトい、毎日淡々として
ものづくりの戦場を生きるこの人たちに対抗するのは至難である。N.F
 

 

共犯化

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「いいか、てめぇーら、よーっくきけ。ソファーはヨ、かっこいいだけじゃだめなんでぇ。」

 
 
完全に田中邦衛が乗り移ったような口調で、その男は話しはじめた。
 
 
「いいか、一番大事なことは何でぇ?それはヨ、座りやすさだ。そんなこともわからねんじゃソファはつくれねぇ。」
 
「次に大切なのは何でぇ?それは長持ちするかどうかだ。カッコはよ、最後さ。いいか?」

 
 
ここはイタリア老舗家具メーカーMolteni&C社の工場。そして彼はソファの製作責任のトップであるA氏。
「ものづくりの戦場」を生き抜く男のオーラをまき散らしている。


 
1セット、数百万の特注ソファに座りながらこう続けた。
 
「お客さまは、神様じゃねぇ。じゃあ何だ?それはヨ、ものづくりのパートナーさ。ここ大切だ。覚えとけ。
そのためには俺たちの技術の高さを時間をかけてよーっく理解してもらう必要がある。じゃないと高い金はとれねぇ。そこサボっちゃいけねぇ」
 
 
 
何と、お客様は神様ではなく、「共犯」だという驚きの理念が披瀝された。
 
何のための共犯化なのか? 
 
それは企業の威信をかけた技術とデザインを堅持するための「共犯化」である。

 
 
「お客様は神様」的な経営者には馴染まない発想かも知れないが、高い価値を高く売るためにはよく考えるまでもなく正しい。

 
 
いきなり核心にせまるA氏のこの発言から、今回のミラノ取材の視点は整理された。

 
実際に田中邦衛が入っていたかは別にして、「共犯化」はものづくりにとって重要なキーワードであることは確かだ。 
 
 
ちなみに、「カッコウは最後」といっていたA氏であるが、超有名デザイナーとのデザイン開発の実績は、この企業が単なる伝統重視型のカタブツ集団でないことを十分に物語っている。
 
 
 
 
尚このレポートはARFLEX JAPAN社主催の見学ツアーに参加させて頂いた時のものであるが、記述内容は完全に私のフィルターを介したものであることをご了承いただきたい。
 
そして産業とデザインとマネーを巡るミラノ取材はつづく。
 
「いいか、てめぇたち、まだまだ、話したいことはたくさんある。でもよ、これでおひらきでぇ。また来ねぇ。」
 
そんな感じで、男前は消えていった。 

N.F
 

みらのないと

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20時間後に出発を控え、追い込まれている。それなのに文章に向き合っているのは完全にどうかしている。
 
どこへ行くのか?イタリアのミラノ。
 
何しに?色んなものを頂きに。
 
高齢化、過密VS過疎、産業VS農業、累積国債赤字・・・
 
日本と類似する点は多々あるが、違うのは「夢と野望」の総量。
 
イタリア野郎には負けてはいられないのだが、まずは「謙虚さ」で向き合うことが必要だ。
 
p.b.Vが日本で抱える問題は
・飲食店デザインの冴えたアイデア
・市街地再生の冴えた政策
・公共住宅の冴えた企画
・大型商業施設の住宅化
・デジタルサイネージの商品化

 
一方、現地での取材対象は
・世界的イベント ミラノサローネ視察
・老舗家具メーカーARFLEXの工場見学
・デザイナー 故Castiglioniの工房見学
・イケてるレストランDongioでの飲み
 
取材対象がズレているかどうかは、今のところはっきりしない。
しかし問題を整理し、感度を澄まして臨めば「頂ける」はずだ。
 
まずは「謙虚すぎる」くらいのノリで乗り込みたい。
 
 
しかし!今日を乗り越えなければ出発は出来ない。
(するんですが。)

宿題山積のp.b.V事務所の風景を呆然とながめながら、こんな文章を書いているうちに残り時間が19時間になっている!!ことにウスウス気付いてはいる。
 
マジ、ヤバいんですけど。N.F

開店準備

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開店準備は事業者に極度の緊張状態を強いる。
我々としてはつくったものを引き渡せば「下船」・・・
といきたいが、それは無理だ。旅はつづく。
 
運営が軌道にのるまでは同じ舟で揺られる覚悟が必要だ。
ましてや、事業者が未知の領域に踏み出す時は
舟は荒波に揉まれることになる。だから下船などあり得ない。
 
パティスリーRAKUはただいま開店準備中である。
実は医療法人しもでメンタルクリニックが経営する就労支援のための福祉施設なのだ。
 
都市部において近年うつ病が急増していることは新聞で知っていた。
精神科で治療を終え、デイケアを経ても、それでもまだ社会復帰は道半ばだ。
 
先生曰く
「治療、ケアに加えて就労支援までカバーしないと
                治癒のサイクルは完成しない」
 
つまりは復帰までを守備範囲にしないと患者数は減らないのだ。
 
そこで就労支援のための事業に船出されたわけだ。
 
 
全体としてはホール、カフェ、キッチン、パン工房、これらが25坪にぎっしり詰まった
コックピットのような構成になった。
 
専門シェフのアドバイスのもと運営ノウハウの開発と開店準備が
同時並行で行われている。
就労訓練志望の方がすでに通われているので、ますます開店準備は大変だ。
 
 
一方で我々に求められたのは「施設っぽさ」の回避だった。
 
そのためには「ブッ跳んだ発想の核」を心に隠し持つ必要があった。
 
 
奇抜なデザインイメージではなく、
p.b.Vの日常である「ものづくりの戦場」そのものをここに持ち込もう。
そう心に誓った。
 
いろんな業種の企業や職人が力を合わせ、現代技術による屏風をつくった。
(複雑な施設機能については誠実に設計した上での話だが。)
 
シラカバやエゾシカ、UVプリント、高分子塗膜、微細ドット。
 
開店準備中の店内に色と光は放ちながら、まだおとなしく立っているが、
近い将来この店の力強い味方になってくれると信じている。
N.F


 

 

 

device探究

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天塩へ.jpg
ことの始まりは、3年ほど前に撮った一枚の写真である。
北海道の北西、100キロにわたり連続する美しい海岸線から撮影したものだ。
 
太陽からの光線が雲の粗密によって分散し、水平線のエッジを照らしいるという
風景である。
 
あまりの大きさからか、不思議なことに私には非常にコンパクトな景色に映った。
 
「光・大気・水蒸気・水」という単純な要素がそのように感じさせたのかも知れない。
 
 
大阪で生まれ育った私には故郷の路地空間のほうが、よほど複雑で得体の知れない
広がりをたたえている。