2010年9月アーカイブ

水協ビル.JPG
大家からのテロ攻撃から約1ヶ月、水協ビルはこんな感じになってしまった。                                                 
                                                                                 
ビルの前面についている格子も当初はオレンジだった。                                                               
この格子は外壁から20センチほど出ているため室内からも見える。                                                        
                                         
茶系の多い店舗がほとんどなので、これが神経に障る。
それでこげ茶色に塗りなおしてもらった。                                                                                  
                                                                                                    
ビルの様子を見た客人が
                             
「オレンジ、そちらの趣味?」                                                      
「ま、まさかっ」                                  
「ですよね~」                                                                                  
                                                                                                                                                                        
これが当社への客人の場合、こいつらに設計させて大丈夫か。。。と一瞬緊張がはしる。                                                                          
                                                                                       
たかが外壁の色という気もするが、やはり我々にとっては日々の商売にかかわる問題なのである。N.F
                                                                                                                                           
                                                     

屋根裏に告ぐ!

|
余白.jpg
「先のことなんて、わかるはずがない」                                                                                               

だから建築の中身を初めから安易な予測で埋め尽くすのは危険だ。
                                                                           
「余白」の仕込み方こそ重要だ。                              
                                                                        
設計時点での要望をカタチにすることは、たやすい。               
しかし、要望を満たした上に「余白」を計画するのは困難だ。                                                    
とにかくクライアントの話しをよく聴くこと。
そこから「余白の仕込み方」が見えてくる。                              
                                                                  
途中でgive upしても誰からも責められることはない。                                              
                                           
建築の持続を考える我々のポリシーが「あきらめたら、おしおきですっ!」
というからやる。                                              
                                                            
                                                                                                                                        
10年前に成就したblan cafeにおいて「余白」を仕込んだのは屋根裏であった。
                                                                                 

このレストランと住宅は群馬の田園に「こっそり」たっている。
開店後、徐々に情報が広まり遠方から足を運ぶ人も多い。                                                           
                                                                         
「築後10年」に「次なる10年」を経営者は構想しはじめた。                                                                                  
10年寝かせた「余白」のお目覚めタイムである。                                                         
毎日の商いを成功させる構想に、この余白が追従するだけの力を秘めているか。           
この建築の価値はここで決まる。  
                                                                                             
                                                   

                                      
私は屋根裏を見上げて、ささやくことにする。やさし~く。

                                                         

「コラっ! しっかりせいッ!
 やっと出番やぞ!ビビッてたらシバクぞっ!」


N.F

素材放談

|
素材.jpg
-カラ松が主張する。
「私は北海道の炭鉱トンネルの支柱として鉱夫の命を守ってきました。凄く水に強いので腐りません。だから私をプロジェクトの主役に・・・」
-トド松が釘をさす
「でもカラ松君は年輪がネジれていて、使いにくそうだよ。その点、僕のほうがずっと使いやすい北海道の木材です。むしろ主役は私かと・・・」
                                                                 
-白樺が前に出る
「いえいえ、私こそが木の有名人です。私の姿と名前は全国区です。エゾシカ同様、山の厄介者扱いでしたが、最近合板として再デヴューしました。美しくて強度があるのです。私を主役に・・・」

-桜がカッと眼を開いて
「お待ち下され。日本の銘木とは拙者のこと。木目が細かく赤みがあって品があるゆえ、拙者が主役でござる・・」

-ステンレス鋼が余裕の顔で
「あのね、木材だけでは無理なのよ。刀の様なシャープさと強靭さをもった鋼材がないと、カタチがビシッとこないんじゃない?まあ俺が影の主役かなあ・・・」

-人工レザーがお色気モードで
「あんたたちは、所詮は堅物なのよ。私みたいにソフトなのがいないと、ベンチのカバー役なんか誰ができんの?私が主役よ!」

-多くの色彩たちが不満そうに
「みなさんは色どりの大切さをお忘れです。みなさんを引き立てているのは我々です。色は材質感より表現力があるのです。従いまして主役は私たちに・・・」

-石こうボードや軽量鉄骨やらが少しシラケタ感じで
「お前らみんな特注じゃん。俺たちは汎用材の王様。近代化の申し子だよ。主役はオ・レ・ラ。」

-私が疲れた表情で
「はいっ、えー皆さん全員が主役ということで、、、」

-素材一同、ジロリと私をにらむ

-私、ブチ切れ加減で
「もーわかった。キツーイ役を与えるから覚悟しとけ!」

かくして
カラ松は  、 都市創造の荒々しくも「逞しい御用材」として、
トド松は  、 原野の闇を照らす「透けない行灯材」として、
白 樺は  、 強いLEDの「光の減衰材」として、
桜  は  、 原野に挑む武士の「境地覚醒の象徴」として、
ステンレスは、 反射と磁性という「モロに金属」として、
人工レザーは、 特殊プリント効果による「ソフト&スムーズ素材」として、
色彩たちは 、 保護色と注目色の変身「自在演出家」として、

市庁舎ロビーで、夫々の新しいお勤めがはじまった。
N.F

|
元気.jpg
札幌市庁舎のロビーリニューアルには「元気カフェ」というプロジェクト名称がついている。
                                                           
「元気」は市の障害福祉政策のキャッチコピーである。
 ロビーでお茶が飲めることになったので、カフェが元気にくっついた。                                                                       
                                                                              
重要なのは、この「元気」という聞き慣れた言葉を
どの次元で解釈するかだ。
                                                       
健康、お達者、ご機嫌・・・くらいの理解だと心に届く建築は生まれない。
                                                       
「元気」をネット辞書でひくと、こんな解説が・・・                                                                                 
                                        
                                                                                              
- 天地の間にあって、万物生成の根本となる精気。-
(ちょっと、カッコよすぎるんちゃう!)                                                                                                                 
                                                                                               
                                                                                                             
設計のスタート時より、我々が悩みぬいて、搾り出したプロジェクトの主題は
・・・「原野に初めての都市を築くcrazyさ」
                ・・・であった。                                                                                   
                                                       
都市建設という大務を成し遂げるcrazyさとはまさにこの
「万物生成の根本となる精気が満ちている」境地である。
平たくいえば、究極の元気。                                 
                                                                  
五体満足であったとしても、その様な境地でいることは難しい。
あるいは、眼前に脅威が立ちはだかった時に境地覚醒が起こるのかも知れない。

                                                                             
我々がかろうじて実感できた「元気=crazy、精気」は先述の記録写真とともに、このプロジェクトの「大きな船」となった。
                                                                            
                                                                                      



                                                                 
プロジェクト-アイコンのひとつ、
札幌都市建設のcrazyキャプテンこと島義勇をリスペクトした
スツールShima-izm。「己」と「S」のパーツから成る。                                           
                                                                                                                      
プロジェクト全体の竣工を目前に、製作者の発案により
「開拓神社」で「気入れ」の儀を済ました。 
                                                                     
閑静な御社には島義勇をはじめ伊能忠敬など
未知の原野を究極の元気で疾走した37柱が祀られている。                                                   
                                                      
家具に「気入れ」とはいささか倒錯の感があるが、
先人のcrazyさは現代のモノづくりをそこまで導くのである。
N.F                                                                                    

記   録

|
記録写真.jpg
「写真はその機能上、宿命的に二つの側面をもつ。」
「それは表現と記録。」
「そして写真の本質は記録にある。」                                       

写真家 森山大道は講演でそう語り、一冊の写真集を我々に紹介した。

                                                                      
その内容は驚くべきもので、無辺の原野に都市-札幌創成の風景が写し撮られていた。                                                         
                                                                                           
                                            
用水路から上げられた大量の木材は圧倒的であり、都市誕生を昨日のことのように実感するには充分すぎた。                                                                 
                                                                                          
札幌市庁舎ロビーのリニューアルプロジェクトは、この疑いようの無い記録を「大きな船」にすることで漸進しはじめた。                                                         
                                                                                                        
この写真集で特集されている田本研造は幕末から明治を生きた函館の御用写真師である。                       
・紀伊の生まれであること。
・34歳のとき、凍傷で右足の膝から下を失ったこと。
・日当3両+経費で札幌建設の記録写真を請け負ったこと。
・二度の函館大火で自身の写真館を全焼させていること。
・しかし間髪を入れずに再建したこと。                                      
                                                                                                     
そんな人物である。                                            
                                                                                                         
問題の写真をデジタルで補修復元したところ、広大な風景を高精度で「記録」していたことがわかった。                                          
                                                                                                    
この写真はロビーのある地点に立てば見ることができる。N.F


無 名 性

|
無名性.JPG
我々の究極の目標は「無名性」のモノづくりである。
「コレ、私が設計しました」的な「私的作品性」を我々は嫌う。
なぜか?それはわからない。サガか本能の様なものである。                    
                                                                                                               
                                                                     
そして「無名性」を追求したプロジェクトがひとつの像を結んだ。
札幌市庁舎ロビーのリニューアルである。
完成までの1年余りはアイデアとカタチを「無名性」に昇華するために要した時間でもある。 

                                                            
我々の最初の作業は、私的作品性の排除克服であった。
                                                   
そして次の作業は、市長から職人までプロジェクトに関わる全員が乗れる「大きな船」を探すことであった。                                                                             
                                   
プロジェクト開始から数ヶ月たった頃、ある一枚の写真との偶然の出会いに「大きな船」を予感した。ここで私はこのプロジェクトの成功を確信した。(その写真については後日)                    
                                                                  
我々はその写真を「大きな船」として一枚の簡潔なコンセプトシートにまとめた。                                                                   
                                          
                                                                           
最後の作業は「大きな船」に揺られながら、多くの協働者とアイデアのpush&catchをねばり強く繰り返すことであった。
                                            
ねばるべき理由は関係者全員で共有している。否定や対立は怖くない。すべては「大きな船」を着岸させるためだ。

                                                                                      
やがては我々の私的作品性は脱色され「無名性」のカタチが立ち現れ、実現に至った。                                                                                 
                                                            
これまでの道程を再整理すると・・・
①飽きるまで私的作品性をカタチにし尽くしたこと。
②全員が乗り込める「大きな船」の存在を信じたこと。
③アイデアをカタチにするための全員対話をし続けたこと。
④もっとユーモアを!!                          
                                                                                           
                                                           
今日はそのプロジェクトのオープンセレモニーであった。
苦労を供にした多くの協働者の充実した笑顔があった。                                     
そしてp.b.Vが「無名性」のモノづくりに到達した瞬間でもあった。                                                           
無名性といっても設計者として作り出した建築について言及する責任はある。
数回にわけてこのプロジェクトについて書く。
                                                                                        
「匿名性」とは自らを物陰に隠すことであるが、
「無名性」は己を白日の下にさらすことである。

               
最後に、このプロジェクトで協働した
職人、工房、デザイナー、山林組合、製材所、
メーカー、コンサル、工事請負、
コディネーター、市関係各課の方々、
本当に、ありがとうございました。

熱  烈  感  謝
                                                                                                                                                           
N.F


03_T4.jpg
大正4年、1条から4条通りに直交する丁目をわける道が敷かれます。
これで、現在のマチの原型が出来上がり。

このころのマチは、1条通り、夕張通りが賑わいをみせ、道の両脇に商いを営む店がずらーと並びます。
まだ、複雑に入り組んだ仲通りがなく、整然と分かりやすい店の並びになっているのがわかると思います。

しかし、賑わいを見せる通りとは逆に今の3条通りや4条通りは、まだまだ開発途中といった感じです。
そのような中、土地を細分するかのように、通り抜け道ができ始める様子も見えてきます。

そして、地図をよーく見て下さい。
実は、今でも営業しているお店や病院を見つけることができます。

こんなに古くから商いをしていたなんて!
M.T

新手のテロ

|
新手のテロ.jpg

大家たち 「このビルは地味なので、
      思い切った色にしてみようかと。」
                                                 
店子A   「それがなんでオレンジ?」
                                                             
大家たち 「インパクトがあり、
      温かみもあるということで」
                                                            
店子一同 「????」
                                                             
店子B   「というより、なんで事前に説明ないの?」
                                                           
大家たち 「誠に、不徳の至りでございまして・・・」
                                                                      
店子B   「で、塗りなおすの?」
                                                                  
大家たち 「時間もお金もないので、このままで」
                                                              
店子C   「えっ。このまま?!頭おかしくなりそう」
                                                                      
大家たち 「いい色だと思うんですがねー」
                                                               
店子A   「もう私、このビル出るっ!」
                                                                  
大家たち 「皆さんのお気持ちはわかりました。」
  
                                                        
その後、何の連絡も無く、別の色が部分的に塗り重ねられている。
                                                                      
                                                           
慣れ親しんだ仕事場がある日突如、強烈なオレンジ色に塗込められたら・・・
                                                             
これはビルの店子にとって、新手のテロといってもいい。             

                                                   
都市景観とか街並みの調和とか、そんなヌルイ話しではない。
                                                                                                                                                        
「毎日の商売」にかかわる話しです。
                                                                                            
We remember  N.Y  9.11             N.F
                                                                                         

脆弱にして強靭

|
Yチェア.jpg

「私もう、がまんできません。ブチキレてしまいそう・・・」                                                    
                                                                                       
                                                                                    
p.b.V併設のcafe me,We.の窓際にある2脚の椅子は、友人から無期限で借り受けている。
Yチェアとよばれる有名な椅子である。
私は有名家具に無関心なので、数年来、店の一角に放置していた。                                        
                                                                               
最近、me,We.の客の体重に耐えかねて、悲鳴をあげた。                                                                  
座面は長~いペーパーワイヤー(つまり紙縒=こより)を交互に編み込んで出来ているだけ。板状のものは存在せず、紐だけでがんばっている。
この椅子の年齢は25才。紙でも丁寧につくれば耐久性をもてるのだ。     
                                                        
長年にわたり、加重や加湿を繰り返すうちに「私、キレそう・・・」となった。
                                                                                             
このキャワイイやつを修理に出した。カンディハウス社旭川工場の職人さんが驚くべき密度でワイヤーを編み直してくれた。
写真の上側が修理まえ、下側が修理後。                                                          
 
                                                                    
ブチキレそうだった椅子は、見事に気をとりなおした。
客の体重を跳ね返すほどのハリで。                                                                
                                                            
素材の脆弱さは、「縒る、束ねる、編む」という操作を加えることで強靭と化した。                                                            
                                                  
「もう私は大丈夫。強い女になりました。」
                                                         
「えっ!また、しゃべった?
っていうより、君、オンナやったんか?」

素材とのおしゃべりは突然で、しかも終わりが無い。N.F