Crazy四国 ③

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ここは香川県高松市仏生山(ぶっしょうざん)、へちま文庫。

家具製作者のMさんが経営する、古書店と家具屋と茶房と工房が一体となったような場所だ。

以前から仕事を通じて凄腕なのは知っていたが、凄腕というよりCrazyだった。

椅子、机、風呂から家まで緻密なアイデアと施工方法でどんどんつくりまくる。

Crazy四国3-②.jpg

Mさんの様に自分で図面を描いて自分でつくるということは、

可能性と危険性が同居する行為だといえる。

アイデアと図面が緻密であればあるほど確実に製作物の質はあがるが

つくり手としての自分は時間的にも経済的にも体力的にも精神的にも窮地に追い込まれる。

日曜大工さえ拒絶する私には想像のつかない境地だ。

 

出来たての家を見せて頂いた。

Crazy四国3-③.jpg

オーク材の小さなブロックで貼り巡らされた床や造作。

そのアイデアのシンプルさの一方で、

間断なく水平垂直に連続させるのは骨が軋むような作業の連続だろう。

 

半日、いろんな仕事を拝見し、さまざまな話をした。

今年一緒に仕事をはじめる約束をして別れた。

 

自分で描いて、自分でつくる。

めまいがするほど危険だ。

Wao Crazy!

 

私に出来るかどうかは別にして、四国を総括すると、、、

 ・実験と失敗を重ねて方向を見出すことは時間がかかるが実りが大きい。

 ・可能性と危険性が表裏一体となるような仕事の仕方を選択するべきだ。

 ・Crazy四国はプロレスラーのリングネームのようだが、かなり弱そうだ。

N.F

 

Crazy四国 ②

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温泉町の小料理屋で出会ったFさんは「伊賀焼」の極意をアツく語った。

酔いと焼き物についての無知から、私にはFさんが何を伝えようとしているのか

理解できなかった。

 

次の日、前夜のかすかな記憶をたどってその方の工房を訪ねた。

 

山の斜面に貼り付けるように民家を移築したその空間は室内なのか戸外なのか

判別のつかない不思議な雰囲気だった。

 

グレート四国2-①.jpg

そしてお気に入りの一品と窯の内部。

なんと窯の中の耐火煉瓦は溶けて鍾乳洞の様に怪しく黒光りしている。

 

 

伊賀から取り寄せた土をこね、2000度を超える窯に20日間ほど入れる。

過度に焼かれることで、土は溶岩の様に変成し、釉薬を使わないのに

不思議な色と光沢と質感が表れる。

 

Fさんは繰り返す。

「土が溶けて痩せるまで焼くのです。」

「土は痩せるのです。痩せてこそなのです。」

 

実験的に毎年少しずつ焼く日数を増やして20日にまで到達した。

 

常識を超えた温度と時間に耐えられるものは少なく、

生まれ変わって出てくるものは800焼いても1%ほど。

あとは壊れるらしい。

 

土が痩せるくらい、窯が溶けて壊れるくらい焼く。

Wao Crazy!

N.F

 

Crazy四国 ①

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頭と気持ちが渇いた時、どの様に潤いを取り戻すか?

軽い渇きなら、旅や読書やスポーツに逃げ込むことは有効だ。

しかし、枯渇に近くなった場合はどうだろう?

私はひたすらCrazyを追い求める。

 

Crazyとは風景とか建築とかデザインではない。

人間と仕事だ。

とうてい太刀打ちできないCrazyに出くわした時

諦めや絶望とともに自分が覚醒するという快感。

Mと言われても致し方ない。

  

というわけで、ある小学校を訪れた。

それは四国の西端の山間にある築60年の木造の建物だ。

Crazy四国①.jpg

 

これを設計した松村さんは当時の市の職員で、たくさんの学校や病院をつくった。

数々のアイデアとエラー。そして手に入れた確かな工法。

この建築はその集大成であり、現在も重要文化財として保存活用されている。

 

Crazy四国②.jpg

 特に窓とペイントと階段、つまり光と色と重力は子供を覚醒させると確信しながら

何度もエラーを繰り返したことは、一目でビンビン伝わってくる。

私の拡散的な仕事のやり方をイヤというほど自覚させられ、絶望感がたまらない。

 

Crazy四国③.jpg

遊び心も容赦がない。この小さな図書室ではローテクで繰り出されるたくさんの楽しい技の

到達度には脅威さえ感じた。

 

 

自らのものづくりの戦場として、故郷の市役所を選択したこと。

40の公共建築を通し、理想の形に何度も挑戦したこと。

失敗をまったく恐れないこと。

ご自身曰く、退職後に自身の事務所で楽しんでやった仕事の質が低かったこと。

 

市役所時代の言葉 

― つづまることろ、気を長く持って、うまず、たゆまず、

― 目に訴えて、コレデモか、コレデモか

 

Wao Crazy!

N.F

 

Mr . スリム

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SLIM 1.jpg煮詰まり切った仕事、冴えのなくなった脳ミソを抱えて知人の牧場を訪ねた。

良い風景や動植物は、私を再生してくれるのか。。。してくれないのか。。。

もはや自然頼み、馬頼み。

泊めてもらったのはコンテナハウスだった。

幅2.4m、長さ10.1m、高さ2.5mの立方体は、ガスボンベや空調機、ソーラーパネルを背負い

地面から少し浮いた感じで、私を迎えてくれた。

SLIM 2.jpg

私は長屋で生まれたせいか、細長い空間に落ち着きを感じる。

だから、このコンテナハウスに入ったとき、なんとも表現できない親しみを感じた。

4人が泊まれるように考えられた、長編方向に展開する無駄のないレイアウトは

快感というしかない。

幅がないので、座る位置や向きに選択肢はなく、まるでシアターの様に窓に向き合うことになる。

SLIM 4.jpg

そして私の眼はパソコンの画面と遠くの風景を何度も往復することになる。

眼球の筋肉はストレッチされ、脳も動き出す。

時々、馬が通り過ぎていく。

眼は横に滑るように追いかける。

前後左右に眼球を動かしながら、パソコンの画面にもどる。

振り向いて2歩、扉をあけると、、、

SLIM 3.jpg

スリムであることは大切だ。

私は思わず叫んだ。

さよならMr.メニエール!

こんにちはMr.スリム!

Mr.N.F! 

Mr メニエ-ル

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メニエル①.jpg

プロジェクトが複雑になればなるほど、話すことは控えて聞くことにしている。

それより何より、「人の話は聞く」ということが大前提だ。

面白くないこと、むずかしいことを、しゃべりまくっている人はいかがなものか。。。的な。

そんなこんなで、この半年「聞きまくった」

しかし、聞ける量にも限度があるようで、リミッターが作動した。

聞こえなくなったのだ!

内耳にリンパ液が溜まり、鼓膜の感度が落ちバランス感覚まで希薄になる。

医者からは「メニエールですね」

それは何?誰?

調べてみると、急性難聴の原因を解明したフランスの医師の名前だった。

 

それからは「聞く」ことを控えた。

聞き流すのではなく、「話す」に転じたのだ。

思いつき、名案、愚案、思い出話、から武勇伝まで、公私にわたり

しゃべりまくった。

今度は、顎関節炎になるかもしれない。

普通にできんのかっ!?

ごもっとも。

ちなみに冒頭の絵はメニエールではありません。

メニエル②.jpg 地球儀職人でした。

m(._.)m

N.F

 

 

 

Slow up 2017

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新年の挨拶2017.jpg

Speed upという言葉はよく聞くが、Slow upはあまり聞かない。

2017をどのように乗り切るかを真剣に考えていたらこの言葉が浮かんだ。

翻訳ソフトでは「遅くなる」。

そのままとえばそのまま。

しかし、意志をもった緩慢さの響きがある。

 

昨年亡くなったラグビーの名選手は

判断を遅らせることの重要性を説いていた。

つまり合法的な「後出しジャンケン」が勝負の確率を上げる。

 

仕事の状況は刻々変化するから、その都度判断してたらプロセスと結果が

食い違う場合が多々ある。

大量の情報を聞き流し、周囲の顔色を伺い、タメてタメて、ネバってネバって、

無能や優柔不断のレッテルを張られても、耐えて忍んで、

最後の最後、その瞬間に出る判断にすべてをかけたい。

その勇気に人は感動するのだ。。。

 

何についての何のことを書いているのか、自分でもわからなくなって来たが、

とにかくSlow upで乗り切ろうと思う。

 

ということで、、、皆さん、あけましておめでとうございます。

そして、読んでくださりありがとうございます。

最近更新もSlow upになりご容赦ください。

 

Slow upの精神で冴えた文章を切り取るよう精進しますので

今年もよろしくお願いいたします。N.F

 

 

ビートソニック

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色んな電球が売られている。カタチが少し違うだけで、各社ほとんどは同じ規格品を扱っている。

標準的規格=大量生産=安価 は当たり前なので、私たちの設計もそれに従う。

しかし、あるプロジェクトで光源そのものについて向き合う必要が出てきた。

真っ暗な夜を、静かに、懐かしく、力強く、温める光。

そんな光を求めて、ある企業の工場を訪ねた。

名古屋が本拠地であるビートソニック社の銭函工場。

ビートソニック①.jpg

会議室に入るなり、いきなり出会ってしまった。

全長426ミリ、直径120ミリ。 

ジュールベルヌの海底二万里に出てくる巨大潜水艦を思わせる。

現在は10W(LED)の明るさだが、

将来的にはイカ釣り集魚灯2800W(メタルハライド)の座を狙って改良中とのこと。

 

工場内のオフィスに案内してもらった。

ビートソニック②.JPG

天井で光っているのは、給水管をカバーしているLEDのテープライトだ。

凍結防止に光源の微熱を利用している。

電熱線や空調より消費電力は少ないし、夜間灯としても十分だ。

発光が伴う発熱までを有効に使うという開発コンセプトだ。

社長は私が好きなエジソンの様にCrazyな発想と行動力を持った方であった。

 

帰路、最初に見た潜水艦の様な光の筒の残像を頭に焼き付け、

プロジェクトのテーマである100年前の闇をどうデザインするかを考えた。

すぐに答えは出なかったが、

高いコンセプトでつくられたものは一瞬で人の心に伝染し、

発想そのものに影響を与えるものだと実感した。

N.F

 

 

G

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空気だろうが、霧だろうが、それがカタチを有するならば、

絶対逃れようのないもの、それがG(重力)の支配。

我々の仕事もGとの闘いが大前提となる。

建築でもプロダクトでもデザインとして軽やかに見せかけることは出来るが、

そうすること自体、Gの支配を受けている証しなのである。

 

先日、一本のショートフィルムをみた。

そのコンセプトはシンプルかつ、目からウロコだった。

 - Gの支配から解き放たれた時、人の意識や行動、モノの在り様は一変する!

 

ジェット機の機内でPCをたたく4人の男。

ok go1.jpg 機内は無重力となり、Gから解放された男たちはノートPCを放棄し、空間を自由に動き回る。

そしてその自由な動きにより隣人や対人との関係は一変する。

ok go3.jpg

サブタイトルの通りに、上下は逆転し、内外は反転し、モノは空間に散乱する。

パニックではなく、フリーダムなのだ。

 

3分20秒のこの短い映像は、緻密で気の遠くなるプロセスによって出来上がっている。

ok go2.jpg

航空機を下降させて無重力にする方法は映画でも多用されているが、

秒単位の運航スケジュールとカット割りをこれほど細かく関係づけた例はないだろう。

 

映像や音にはGの支配は及ばないのだ。

シネコン向けの企画という商業的支配(これもG?)からも解放されている。

本当に痛快な3分20秒だった。

 

現在、p.b.Vはある映像プロジェクトに取組んでいる。

映像や音楽などの専門家によるサポートは受けるが、コンセプトと構成は我々がつくる。

驚くべきは、これまで建築で培ってきた経験がほとんど通用しないことだ。

謙虚さと冴えはもちろんのこと、ウィットやリズム感など試行錯誤が続く。

プロジェクトの展開は work rate に up します。 N.F

3日間

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夏休みの宿題 2016①.jpg8月の終盤、大阪での3日間は、印象深いものだった。

 

1日目

ある金曜の夕方、小・中学校時代の親友、級友、悪友、約15人と久々に会った。

 - たこ焼きのアジアでの将来性

 - 金融質流れ品の流通事情

などなど、大阪のマニアックなトレンドについて情報交換しているうちに明け方になっていた。

約10時間、本当によくしゃべった。

 

 

2日目。

朝から高校ラグビー部のOB会。グラウンドで汗を流して、夕方から約60人で懇親会。

 - 摂氏50度のサウジアラビアへの出張の話

 - 人材育成の実験の場としての飲食チェーン事業

などなど、興味深い話題は尽きず、完全に終電をのがした。

約12時間、本当によくしゃべった。

 

 

日程の2/3を過ぎた。大量に交換される言葉、言葉。

 

 

 

3日目

夕方から、高校の友人・知人との集いだった。20名弱、はじめて話す人もいた。

 - もらい火で家も店も全焼した後輩からの火災保険更新と特約加入のアドバイス

 - 自動車の左折と右折、本当に難しいのはどちらか?

 

などなど、何とか終電に乗れたが、メールを打っていて最寄駅で降りそびれた。

約6時間、本当によくしゃべった。

 

 

3日間で28時間。

リミッターが壊れ、妙なハイ状態に到達していた。

 

脈絡のない話にスジを見出し、、、

スベッているはずの内容に延命を与え、、、

非難や禁句を金言に昇華させ、、、

 

 

数日を過ぎても、尽きることなく心の中に満々と蓄えられた言葉は

当分の間、私の燃料となってくれるだろう。

 

私に大量の言葉を浴びせてくれた皆さん、この場を借りて m(_ _)m

 

ちなみに4日目以降無口な日々を送った。 

 

写真は 3日目のステージ、お好み焼き 満月 

N.F

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇跡のパス

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軌跡のパス ①.jpgp.b.Vのオフィスは2003年より、この築50年ほどのビルの3階にある。

地下はカラオケパブ、1階はJAZZ喫茶、2階は洋食屋という構成だ。

我々の発想の源は、この雑居ビルでの日常生活からその多くを頂いている。

特に2階の洋食屋  「キッチン館(やかた)」  は欠かせない存在で

p.b.Vの社食といっても過言ではない。

 

飲みたいときは旬の魚が、空腹のときにはお任せ盛りが、

ほとんど阿吽の呼吸で出てくる。

箸を進めながら、店主や客人たちとバカ話に没頭するうちに

仕事の課題解決の糸口がつかめるという、好都合な塩梅になっている。 

軌跡のパス ②.jpg

6年ほど前、そんな幸せな日常に危機が訪れた。

     店主高齢につき、店仕舞い。

どうやって存続させるべきか? 店の経営とは無関係の私もなぜか毎晩の様に激論に参加した。

店主からは 「後継者が見つからない場合はp.b.Vで引き受けてくれないか、、、」

みたいな意味不明の暴論まで飛び出した。

しかし、奇跡は起きた。ホテルレストランを退職したMさんが引き受けてくれた。

店名「キッチン館」もそのまま、メニューもそのまま。

かくしてp.b.Vの社食消滅の危機は回避され、幸せな日常は担保されたのだ。

 

しかし、しかし、危機は忘れたころにまたまたやって来る。

     店主高齢につき、店仕舞い。

こんどこそ社食消滅かと諦めかけた時、奇跡は再現された。

有名レストランで修業を重ねた敏腕料理人Yさんが引き継ぐことになった。

しかも、店名「キッチン館」も再び継承された。

 

この日は、奇跡のパスをつないだ3人が初めて揃った。 軌跡のパス ③.jpg

写真の右から左に、奇跡のパスはつながれた。

初代と2代目、2代目と3代目はそれぞれ昔の師匠と弟子の関係。

初代と3代目は、初対面。

 

私はラグビーのゲームにおいて、幾多の奇跡的なパスを目撃してきたが、

ランキング1位は文句なく、この 「キッチン館のパス」。

 

余談だが、「キッチン館」という屋号は初代店主の苗字である館田(たてだ)に由来している。

約50年前、店主はビルの2階という立地に不安を感じながらも、

繁盛を祈願して命名したことだろう。

経営権だけではなく、創業時の不安や希望までもがパスされたのである。

N.F

 

 

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